2022 Fiscal Year Research-status Report
銀河形成期における超巨大ブラックホール成長の理論的研究で迫る共進化の起源
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19K03918
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Research Institution | National Institute of Technology (KOSEN), Kure College |
Principal Investigator |
川勝 望 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 教授 (30450183)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 理論天文学 / 超巨大ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の高精度観測装置によって、銀河中心には太陽質量の100万倍から10億倍もの超巨大ブラックホール(SMBH)が普遍的に存在し、その質量は銀河バルジの質量に比例することが明らかになってきた。しかしながら、その形成メカニズムは未だ謎に包まれており、天文学における最重要テーマの1つである。この問題を解決するために、銀河からのガス供給により形成される数10パーセクの銀河核ガス円盤(CND)を介して、銀河からブラックホールまで6桁ものダイナミックスレンジに渡るガス降着過程と、ブラックホール近傍からの輻射やWindによるフィードバック効果を整合的に考慮した理論モデル「多階層連結モデル」の構築が必要である。近年、銀河団中心の巨大楕円銀河で大量の分子ガス銀河団中心での AGN feedback に果たしている役割について調べるために、新たに準解析的モデルを構築した。計算の結果、核周円盤はその質量の変化により安定と不安定の状態を行き来する一方、ブラックホールへの降着率を長期的には一定に保つという調整弁の役割を果たしていることがわかった(Fujita, Kawakatu, Nagai 2022)。 近年、サブパーセク領域に注目すると、AGNから輻射によりWindが吹き、低光度AGNのときのみ、極方向へガスが巻き上げられることが分かった。このことは、Windがサブパーセクスケールでの遮蔽だけでなく、ジェット収束にも寄与する可能性があることを示唆するものである(Kawakatu et al. 投稿準備中)。加えて、AGN起源で吹き飛ばされたガス雲により、パーセクスケールのAGNジェットの伝搬が一時的に阻害されることも明らかになった(Kino, Niinuma, Kawakatu, et al. 2023)。これらの成果から、超巨大ブラックホールの周辺領域は従来の予想よりも複雑な現象が起こっていることことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀河団中心の銀河のAGNフィードバックのモデル、ジェットとWindとの相互作用に関する理論モデルの構築、および関連する観測研究が順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
活動銀河核(AGN)に付随する相対論的ジェットの形成・進化、およびジェットが周辺ガスへ与えるフィードバック過程を理解するために、近傍電波銀河3C84,NGC1052,NGC4261に焦点を当てて、理論モデルと観測との詳細観測を行う。加えて、パーセクスケールのミニコクーンの力学からジェットのパワーや組成についての調査も新たに進めることで、AGNフィードバックに関する知見を得る。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウィルス感染予防のため、参加予定の国内外の研究会が中止もしくはオンライン開催となったため。
(計画)新型コロナウィルスが収束した場合には、今年度の成果報告等の旅費に使用する。
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[Presentation] 内山久和(愛媛大), 山下拓時(国立天文台), 長尾透, 鍛冶澤賢, 松岡良樹, 久保真理子(愛媛大), 小野宜昭(宇宙線研), 利川潤(Bath Univ.), 市川幸平(東北大), 川勝望(呉高専), 鳥羽儀樹, 今西 昌俊(国立天文台), 伊藤慧(東京大), 川口俊宏(尾道市立大), Chien-Hsiu Lee (NOIRLab), 斎藤智 樹(兵庫県立大)2022