2019 Fiscal Year Research-status Report
電波補償光学のための超伝導回路を用いた相関型偏波カメラの開発
Project/Area Number |
19K03920
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
永井 誠 国立天文台, 先端技術センター, 特任研究員 (50522877)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電波望遠鏡 / 超伝導検出器 / 偏波カメラ / 鏡面測定法 / コプレーナ導波路 / 結合器 |
Outline of Annual Research Achievements |
相関型偏波計の遅延結合回路の設計と性能評価準備を十分に進めることができた。 設計においては、回路の主要な構成要素としてコプレーナ導波路を中心とした単層膜から成る180度ハイブリッド結合器と90度ハイブリッド結合器を設計した。電磁界シミュレーションを用いて、100GHz帯での特性を評価した。この結果、良好な特性を持つ設計が得られた。 これらの構成要素を組み合わせた電磁界シミュレーションも行った。シミュレーションには吸収体のモデルも必要であるが、実際の偏光計で用いる吸収体は大きいためそのままシミュレーションに用いることは不可能であったので、シミュレーション用の吸収体の模擬モデルも用意した。これらを組み合わせたシミュレーションにおいて、180度ハイブリッド結合器を省略した単純な構成では出力端子間の絶縁ができず遅延結合回路として不十分であるが、180度ハイブリッド結合器を用いた構成であれば出力端子間の絶縁ができることが確認できた。本年度末時点では、遅延結合回路としての性能をより向上させるためにパラメータの調整を始めているところである。 性能評価準備においては、入射電波を偏波させるためのワイヤグリッドと、これを回転させるための回転ステージを確保した。これにより、野辺山45m電波望遠鏡搭載用100GHz帯電波カメラに偏波計を搭載して、偏波の向きが一定速度で回転する入射電波を照射することが可能となった。 これらの成果について、日本天文学会春季年会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相関型偏波計の中心的な部分となる遅延結合回路の設計をおおむね終えることができている。性能も各構成要素の設計段階としては十分である。素子全体の電磁界シミュレーションについても実行できるようになりつつある。 ワイヤグリッドと回転ステージを確保できたので、偏波計の性能評価に必要な偏波した入射電波を生成できる目処が立った。野辺山45m電波望遠鏡搭載用100GHz帯電波カメラをそのまま使えるように偏光計を設計することで、試作できれば特に障害無く性能評価が可能になると見込んでいる。 素子の製作については、確立しておきたい基礎的な技術がまだ残っている。しかし、先端技術センターのクリーンルームがメンテナンスのため長期間使用できなかったため、製作方法の条件出しは残念ながら進めることが叶わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
設計については、今後は平面アンテナも含めた電磁界シミュレーションを行って偏波計全体の設計を定めていく。偏波計の試作を始めるために、超伝導薄膜上のエアブリッジの製作方法の条件出しなど技術的な基礎を固める。設計と製作方法が確立でき次第、偏波計を試作する。
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Causes of Carryover |
2つの研究会へ出張予定があったが、これらが中止となった。もし、今後関連する研究会が開催されることになった場合には参加したい。 偏波特性を評価するための回転ステージを入手できたので、この制御に用いる計算機や較正電波源などの整備に使用したい。
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