2020 Fiscal Year Research-status Report
大質量原始星の進化経路の特定及び解明を目指した、周期-光度関係の観測的検証
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19K03921
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
杉山 孝一郎 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 特別客員研究員 (50624954)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 大質量星形成 / 強度変動 / メーザー / 周期変動 / 周期光度関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、大質量原始星の進化の経路特定・解明を目指し、原始星表面における質量降着率の有力な観測的導出法として期待される周期-光度関係の観測的検証へ向け、初年度(令和元年度)から続く“6.7-GHz周波数帯におけるメタノール分子からのメーザー放射の母体カタログに対する周期的な強度変動の系統的探査”の観測を順調に継続した。本探査は、平成24年度末から、茨城(日立)32-m電波望遠鏡を用いて開始したメタノールメーザー強度モニター観測を、本研究の2年度目(令和2年度)末までの計9年間の長期に亘り、高頻度に継続してきた結果、特に2-3年と長い周期を示す可能性のある天体も含め、短長あらゆる周期を示す天体を網羅するに至った。また、もうひとつの目標であった“周期変動天体に付随する22.2-GHz帯における水分子からのメーザー放射を用いた年周視差計測による高精度な距離決定”に対しては、位置天文学専用の超長基線電波干渉計VERAを用いた観測提案が承認されており、現在対象となる22.2-GHz帯水分子メーザーの出現待ちとなる。なお、前者高頻度な強度モニターの副産物として、初年度に新検出した大質量原始星G358.93-00.03 MM1における6.7-GHzメタノールメーザーの突発的増光現象(大質量原始星周囲における降着バースト起因の突発増光現象としては貴重な3例目)に対し、世界20カ国以上の研究者で構成しているMaser Monitoring Organization (M2O)への情報共有を通じて、共同研究者Stecklum et al. (2021, A&A, 646, A161)による赤外線放射のメーザーと同期した突発的な増光の検出、および降着バースト起因である観測的裏付けに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目標の柱のひとつに掲げていた“6.7-GHz帯メタノールメーザーの周期的な強度変動の系統的探査”観測は、平成24年度末からの計9年間の長期に亘る大規模モニター観測を完了した。これにより、最終年度(令和3年度)における2-3年と長い周期を示す可能性のある天体も含めた短長あらゆる周期を網羅した周期変動天体のカタログ作成を目指す準備は達成した。しかし、柱のふたつ目である“周期変動天体の22.2-GHz帯水メーザーを用いた年周視差計測による高精度な距離決定”に対しては、2年度目における22.2-GHz帯水分子メーザーの出現に至らなかったため、VERAを用いた年周視差計測は一時中断となっている。このような理由から、これまでの進捗は「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(令和3年度)は、これまでの計9年間の長期に亘る大規模モニター観測データに対する詳細な周期解析を通じ、短長あらゆる周期を網羅した6.7-GHz帯メタノールメーザーの周期的な強度変動の系統的探査の完了、およびカタログ化を進める。また、22.2-GHz帯水メーザーを用いた周期天体の年周視差計測においては、メーザーの出現・検出を通じた、残りの天体の観測実施可能なものに対する計測と高精度な距離決定を進める。これらの結果を組み合わせることにより、大質量原始星における周期-光度関係の高精度な観測的検証の完了を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大に際する海外渡航制限に伴い、各種出張の自粛に至ったことにより、主に国内および外国への共同研究や国内・国際研究会への参加・講演に際する旅費として計上していた額と実使用額との差額が生じた。差額分は、最終年度において、国内出張および海外渡航制限の解除が実現した暁に、その後可能となると期待される各種出張への計上を予定している。
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Remarks |
研究成果発表[雑誌論文] (査読有り, 国際共著) のうち、Kim Jungha et al. (2020, ApJ, 896, 127) と、VERA Collaboration, Tomoya Hirota, et al. (2020, PASJ, 72, 50) に関するWebページに該当する。
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