2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K03922
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
神鳥 亮 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, アストロバイオロジーセンター, 広報普及員 (90534636)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光学赤外線天文学 / 偏光 / ダスト / 磁場 / 星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウィルスの蔓延による渡航制限のため、本研究のための主力観測装置である南アフリカ天文台のIRSF/SORPOLを用いた、分子雲コアの近赤外線偏光観測は、進められていない。その代わりに、使用可能な望遠鏡を用いた、分子雲コア形成の理解のための研究を進めた。野辺山45m電波望遠鏡を用いたフィラメント分子雲の電波での分子分光観測と、すばる望遠鏡を用いた同じ分子雲の深く広い近赤外線撮像観測を行い、そのデータ解析を進めた。電波観測からは、雲の温度や乱流構造がわかり、近赤外線撮像観測からは、雲の質量や密度構造がわかる。この雲に対しては、IRSF/SIRPOLによる近赤外線偏光観測のデータがあるので、全部のデータを合わせることにより、雲の磁場強度を推定できる。それにより、自己重力に対抗する力としての熱的サポートと乱流サポートと磁気的サポートの強さを求め、雲の力学的な安定性を知ることができる。このことは、雲がどのように分裂して分子雲コアを形成するかを決める重要な情報である。分子雲コアは、恒星や惑星系の直接的な母体であり、コアの性質を理解することは、星惑星形成の初期条件の理解に繋がるため重要である。コアの性質がどのように決まるかの起源を知るためには、フィラメント分子雲の分裂過程を理解する必要があり、分裂過程を理解するには、フィラメント分子雲の内部構造を良く知る必要がある。今回の、野辺山45m望遠鏡とすばる望遠鏡での観測により、フィラメント分子雲の内部構造の精密測定ができた。フィラメント分子雲→分子雲コア形成→星惑星形成と続く物理過程の全体像を良く理解することにより、惑星系の多様性と普遍性の起源の解明に向けて研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルスの蔓延による渡航制限のため、我々の主力観測装置である、南アフリカ天文台のIRSF/SORPOLが使えない。しかし、査読つき学術論文は、すでに6本を出版済みであり、本研究課題についての研究成果は創出できている。IRSF/SORPOLによる近赤外線偏光観測データに関しては、これまでに取得した全ての有望なデータの論文化が完了している。南アフリカ共和国への渡航制限が解除されて、追加の観測ができるようにならないと、分子雲コアの磁場構造の論文については、出すことができない。現在は、これまでに出版した全ての論文の内容を統合し、それにより、「フィラメント分子雲と分子雲コア形成と星惑星形成」の全ての物理過程を繋ぎ、惑星系の多様性と普遍性の起源をより良く理解するためのシナリオを提示する論文を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの蔓延が収束し、なるべく早く南アフリカ共和国への渡航制限が解除されることを期待している。それまでは、現在でもリモート観測などで使うことができる、すばる望遠鏡などを使って、フィラメント分子雲や分子雲コア形成の観測的研究を展開していきたい。すばる望遠鏡では、広視野の近赤外線撮像カメラが使用可能である。近赤外線は塵粒子に対する透過力が強いため、フィラメント分子雲の背後に分布する多数の星々を雲を見通して観測できる。このとき、夕日が赤く見えるのと同じメカニズムで、雲内部の塵の多い高密度領域を通り抜けてきた光ほど、赤外線での色が赤くなる。この効果を利用することで、背景星の色の測定から、フィラメント分子雲の中のガスと塵の濃さの空間分布を詳細に調べられる。フィラメント分子雲の内部構造には未解明な点が多いため、このような精密観測を行うことにより、雲の内部構造と、雲の分裂過程・コア形成との関係の研究を展開したい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの蔓延による渡航制限のため、我々の主力観測装置である、南アフリカ天文台のIRSF/SORPOLを使った長期観測のための渡航ができない。来年度に渡航できるようになることを期待している。現在は、データ解析が研究の主体になっているため、計算機関連の備品の購入は増えると見込んでいる。また、国内のコロナ収束の状況によっては、研究発表などでの国内出張が増える可能性もある。
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