2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K03922
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
神鳥 亮 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), アストロバイオロジーセンター, 研究支援員 (90534636)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 星形成 / 近赤外線 / 磁場 / ダスト / 偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な分子雲コアを取り巻く湾曲磁場を発見し、これまでに6編の学術論文として出版した([FeSt 1-457] Kandori, R. et al., 2020, ApJ, 888, 120; [CB81/L1774] Kandori, R. et al., 2020, ApJ, 890, 14; [B68] Kandori, R. et al., 2020, PASJ, 72, 8; [B335] Kandori, R. et al., 2020, ApJ, 891, 55; [BHR71] Kandori, R. et al., 2020, ApJ, 892, 128; [SL42/CrA-E] Kandori, R. et al., 2020 ApJ, 900, 20)。これらの成果は、南アフリカ天文台で運用中のIRSF/SIRPOLを用いた星間偏光・星間磁場の赤外観測に基づいている。6天体は、それぞれが異なった環境や星形成段階にあるため、天体毎に独立した論文として報告した。孤立した星なし分子雲コアのFeSt 1-457に付随する砂時計型磁場構造を発見し、星なしボック・グロビュールのB68に付随する砂時計型磁場構造を発見し、原始星を形成中の星ありボック・グロビュールのB335に付随する砂時計型磁場構造を発見し、星なし分子雲コアのCB81/L1774に付随する質量中心と磁場中心の位置がオフセットした砂時計型磁場構造を発見し、原始連星を形成中の星ありボック・グロビュールのBHR71に付随するU字型磁場構造を発見し、原始星を形成中の星あり分子雲コアのSL42/CrA-Eに付随するU字型磁場構造を発見した。このように、コア・スケール(数千から1万au程度)の湾曲磁場が様々な天体に付随する様子が見え始めてきており、星形成における磁場の役割の解明への足場が出来上がりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存データの解析に基づく、天文学論文の出版数はこれまで順調に推移している。しかしながら、世界的なコロナ流行のために、南アフリカ天文台への観測渡航が行えない状態が続き、新規のデータを大量に取得することができない状態が続いた。また、この期間において、近赤外線3色同時カメラSIRIUSのKsバンド検出器にトラブルが生じたため、近赤外線撮像において本来の性能発揮ができなくなった。これらの理由により、南アフリカ天文台に長期滞在しながらの大規模なサーベイ観測が実行できなかった。現在、南アフリカ天文台のIRSF望遠鏡は、運用を再開しており、また、SIRIUSのKsバンド検出器の問題も解決されている。本研究計画は、2023年度が5年計画の最終年度であったが、渡航と観測の目処が立ったため、1年間の計画延長を申請した。この計画延長が許可されたため、本研究計画は、2024年度を最終年度として今年も推進されることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年の夏期(南半球での冬期)に、南アフリカ天文台への2ヵ月ほどの長期の渡航を行い、分子雲コアの赤外線偏光撮像の大規模なサーベイを行いたい。この渡航と滞在にかかる費用は100万円ほどであると見積もっているので、現在の研究費の残額は、この観測によりほぼ全てを消化できる見通しである。この観測では、砂時計型磁場構造などに代表される湾曲した磁力線構造を分子雲コアの周囲で探査することを主な目標とする。また、分子雲コアの母体となるフィラメント分子雲の磁気臨界性を調べるための観測も行い、フィラメント平衡解やフィラメント分裂やコア形成のモデルとの比較を行う。これらの観測に基づく論文の作成に加えて、以前から保有する大量の赤外偏光データの解析結果を報告する論文の出版も進める予定である。
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Causes of Carryover |
世界的なコロナ流行と観測装置のトラブルのために、南アフリカ天文台への長期の観測出張ができなかったために、やや大きな残額が生じた。コロナ流行が収まり、また、観測装置のトラブルが解消したために、今年度は、南アフリカ天文台への渡航・滞在による2ヵ月ほどの長期観測が可能な見通しである。IRSFスケジュール会議において観測提案を提出し、計画通りに採択されれば、現在の研究費の残額の大半を消化できると見込んでいる。
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