2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of magnetic filed role on massive star formation by cloud cloud collision
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19K03923
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
羽部 朝男 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (90180926)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 巨大分子雲 / 大質量星形成 / 磁場 / 衝撃波 / 大規模数値シミュレーション / 分子雲コア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
大質量星は、銀河進化に多大な影響を及ぼすが、その形成条件は未解明である。大質量星形成として分子雲衝突が観測的に有力となっている。私たちは,それ以前から分子雲衝突の3次元数値シミュレー ションを系統的に進め、分子雲衝突による高密度コア形成に対する分子雲内乱流や衝突速度の影響を調べ、乱流の効果だけでは大質量星形成可能な高密度コア形成には不十分であることを示した。そこで、本研究では、分子雲衝突に磁場の効果を取り入れ、大質量星形成が可能な高密度コア形成の可能性を調べる。 1年度では、大局的に一様磁場中に分子雲を仮定し、乱流速度場を加えて時間発展させた。その結果、近傍分子雲の磁場と密度の観測的関係を、一様磁場が4μGの時によく再現することを明らかにした。次に衝突方向に対して様々な方向に一様磁場を仮定し、 典型的な衝突速度10km/sで、大きさと質量の異なる分子雲を衝突させ、大質量の高密度分子雲コア形成の可能性を調べた。その結果、磁場が弱い時と比較して、 質量がかなり大きな分子雲コアが形成され自己重力的に束縛されることを示した。こうした分子雲コアでは星形成が期待される。 10太陽質量を超える分子雲コアの多数形成は、大質量星形成の可能性を強く示唆する。この結果は日本天文学会で発表し、査読論文とし日本天文学会欧文誌に掲載された。 2年度では、銀河系内で衝突速度が10km/sより大きなの衝突分子雲が発見されているので、この場合の大質量星形成の可能性を解明するために研究を進め、大質量分子雲コア形成には衝突速度の応じた大きなサイズの分子雲が必要であることを明らかにし、その成果は、日本天文学会で発表し、査読論文として国際的な学術雑誌に投稿準備中である。 また、観測研究者との分子雲衝突に関する共同研究も推進し、査読付きの共同研究論文を数編発表し成果を上げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大質量星形成を解明するため、初年度には磁場の効果を取り入た分子雲衝突の数値シミュレーションを衝突速度が10km/sの場合に行ない、大質量星形成が可能な大質量コ アが形成されることを示した。得られた結果は、日本天文学会や国内研究会、で報告した。また、その内容は日本天文学会欧文誌に査読付き論文として掲載された。この研究で得られた結果から、この研究をさらに進める方向も明らかになってきた。磁場が弱い時の分子雲衝突では、衝突によって形成された衝撃波面での non-linear thin shell不安定(以下NTSI)が、小質量分子コアの形成を促進する一方で、大質量分子雲コアの形成を抑制することが明らかになった。磁場が強くな るとこのNTSIが抑制されて、分子雲コア質量の成長に寄与する結果を得た。このことは衝突速度が10km/sより大きい場合にはNTSIが強くなると期待され、その結果分子雲コア形成に対する強い抑制効果の可能性がある。銀河の中心に近い領域では銀河の微分回転は強く、星間磁場は強く、分子雲同士の衝突速度が大きいと期待される。 そこで2年度では、衝突速度が10km/s以上の場合、つまり20km/s, 30km/s, 40km/sの場合に、分子雲衝突による大質量星形成の可能性を明らかにする研究を進めた。その結果、衝突速度による大質量分子雲コア形成への抑制効果が明らかになった。具体的には、近傍分子雲における磁場の観測関係を満たす磁場を分子雲に仮定する場合、大質量分子雲コア形成のためには、分子雲のサイズに下限が存在する可能性を明確にすることができたという興味深い結果を得た。この結果は、日本天文学会の年会で報告した。また、その成果の一部を国際的な学術誌に投稿する準備がほぼ完了している。分子雲衝突に関する観測研究者との共同研究も進めるkとができ複数の査読論文を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの我々の研究から、磁場が弱い時の分子雲衝突で形成された衝撃波面ではnon-linear thin shell不安定(以下NTSI)が、小質量分子コアの形成 を促進する一方で、大質量分子雲コアの形成を抑制する効果が明らかになった。強い磁場では、このNTSIが抑制され、分子雲コアの質量成長に寄与することを、衝突速度が10km/sの時に示した。銀河の内側では、分子雲の衝突速度が大きくなると予想され、衝突速度が10km/sより大きいと期待され、その結果大質量分子雲コア形成の抑制効果が予想される。一方NTSIはより大きな磁場で抑制される可能性がある。銀河の内側では銀河の微分回転が強く、強い星間磁場が期待される。また、観測的にも星間ガスの質量面密度も大きいので質量が大きく密度も高い分子雲が形成され、それが大きな速度で衝突する可能性がある。 そこで、こうした状況における分子雲衝突 が大質量星形成に寄与する可能性を明らかにする。そのために、磁場が強く、分子雲の質量と密度も大きく、衝突速度もおおきな場合について数値 シミュレーションを系統的に進める。すでに、近傍分子雲に対応する分子雲が、大きな速度で衝突する場合に、大質量分子雲コア形成に対する影響を調べ、サイズの大きな分子雲が大質量分子雲コア形成に必要であることを明らかにした。今後、より大きな磁場や高い密度の場合に関する研究へと発展させる予定である。この研究は銀河の内側における大質量星形成理解に大きく寄与する可能性がある。並行して、星形成を模式的に調べるためにsink particle modelの開発を行う。 以上の研究では、研究協力者福井と鳥居と、我々の結果と彼らの観測結果の特徴を互に議論して共同研究を進める。こうし た理論観測両面での協力で,本研究を効果的に進める。 研究成果はまとまり次第査読付き論文として発表する。
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Causes of Carryover |
2020年の9月に大きな国際会議がヨーロッパで予定されていたので、それに出席し研究発表と関連する研究者と研究討論を行うとともに、いくつかの海外の大学を訪問して分子雲衝突による大質量星形成に関する研究討論をより深く行う予定で予算を確保していた。これには本研究に協力してもらっている大学院生を同行する予定にしていた。しかし、それらがコロナウィルスの影響で延期となったために予算が使用できなかった。次年度もコロナウィルスの見通しは不確定であるが、ワクチンの普及が期待できるので、引き続き国際会議出席のための予算を確保する予定である。また、国際会議等がさらに延期となる可能性がある場合には本研究の研究期間の延長も考えている。
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Research Products
(16 results)