2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of magnetic filed role on massive star formation by cloud cloud collision
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19K03923
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
羽部 朝男 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (90180926)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 巨大分子雲 / 大質量星形成 / 磁場 / 衝撃波 / 分子雲コア形成 / 大規模数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
大質量星は、銀河進化に多大な影響を及ぼすが、その形成条件は未解明である。大質量星形成として分子雲衝突が観測的に有力となっている。私たちは,以前から分子雲衝突の3次元数値シミュレー ションを系統的に進め、分子雲衝突による高密度コア形成に対する分子雲内乱流や衝突速度の影響を調べ、乱流の効果だけでは大質量星形成可能な高密度コア形成には不十分であることを示した。そこで、本研究では、分子雲衝突に磁場の効果を取り入れ、大質量星形成が可能な 高密度コア形成の可能性を調べる。 1年度では、大局的に一様磁場中に分子雲を仮定し、乱流速度場を加えて時間発展させ、近傍分子雲の磁場と密度の観測的関係を、一様磁場が4 μGの時によく再現することを明らかにした。次に衝突方向に対して様々な方向の一様磁場を仮定し、 典型的な衝突速度である10km/sで、大きさと質量の異なる分子雲を衝突させ、大質量の高密度分子雲コア形成の可能性を調べた。その結果、磁場が弱い時と比較して、質量がかなり大きな分子雲コアが多数形成され自己重力的に束縛されることを示した。こうした分子雲コアでは星形成が期待される。 10太陽質量を超える分子雲コアが多数形成され、大質量星形成の可能性を強く示唆する。この結果は日本天文学会で発表し、2年度に査読論文とし日本天文学会欧文誌に掲載された。 2年度以降、銀河系内で衝突速度が10km/sより大きなの衝突分子雲が発見されていることから、こうした場合の大質量星形成の可能性を解明するために研究を進め、大質量分子雲コア形成には衝突速度の応じた大きなサイズの分子雲が必要であることを明らかにした。その成果は、日本天文学会で発表し、査読論文として国際的な学術雑誌に投稿準備中である。また、国際会議でも研究発表した。 観測研究者との共同研究も推進し、査読付きの共同研究論文を数編発表し成果を上げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大質量星形成を解明するため、初年度には磁場の効果を取り入た分子雲衝突の数値シミュレーションを衝突速度が10km/sの場合に行ない、大質量星形成が可能な 大質量コアが形成されることを示した。得られた結果は、日本天文学会や国内研究会で報告した。また、その内容は日本天文学会欧文誌に査読付き論文とし て掲載された。この研究で得られた結果から、この研究をさらに進める方向も明らかになってきた。磁場が弱い時の分子雲衝突では、衝突によって形成された衝撃波面での non-linear thin shell不安定(以下NTSI)が、小質量分子コアの形成を促進する一方で、大質量分子雲コアの形成を抑制することが明らかになった。 磁場が強くな るとこのNTSIが抑制されて、質量の大きな分子雲コアの成長に寄与する結果を得た。以上から、衝突速度が10km/sより大きい場合にはNTSIが強くなると期待され、その結果分子雲コア形成に対する強い抑制効果の可能性がある。銀河の中心に近づくと、銀河の微分回転は強くなり、星間磁場は強く、また分子雲同士の衝突速度が大きいと期待される。 そこで2年度以降、衝突速度が10km/s以上の場合、つまり20km/s, 30km/s, 40km/sの場合に、分子雲衝突による大質量星形成の可能性を明らかにする研究を進めた。その結果、衝突速度による大質量分子雲コア形成への抑制効果が明らかになった。具体的には、大質量分子雲コア形成のためには、近傍分子雲における磁場の観測関係を満たす磁場を分子雲が持つ場合、分子雲のサイズがある値以上必要という興味深い結果を得た。以上の結果は、日本天文学会の年会で報告した。また、その成果の一部を国際的な学術誌に投稿する準備がほぼ完了している。分子雲衝突に関する観測研究者との共同研究 も進めることができ複数の査読論文を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの我々の研究から、磁場が弱い時の分子雲衝突で形成された衝撃波面ではnon-linear thin shell不安定(以下NTSI)が、小質量分子コアの形成を促進する一方で、大質量分子雲コアの形成を抑制する効果が明らかになった。強い磁場では、このNTSI自体が抑制され、大質量の分子雲コアの質量成長に寄与することを、衝突速度 が10km/sの時に示した。銀河の内側では、分子雲の衝突速度が10km/sより大きいと期待される。もし、分子雲が太陽近傍と同程度の磁場を持つとすると、大質量分子雲コア形成の抑制効果が予想される。一方NTSIはより大きな磁場で抑制される可能性があるので、大きな磁場があればそれが大質量分子雲コア形成を促進する可能性がある。これまで、近傍分子雲に対応する分子雲が、大きな速度で衝突する場合を調べ、大質量分子雲コア形成にはサイズの大きな分子雲が必要であることを明らかにした。今後、銀河中心領域に相当する、非常に強い磁場を持ち質量と密度も大きな分子雲の場合について、より大きな衝突速度にまで範囲を広げて数値 シミュレーションを系統的に進め、より大きな磁場や高い密度の場合に関する研究へと発展させる予定である。この研究は銀河の内側における大質量星形成の理解に大きく寄与すると期待している。並行して、星形成をより具体的に調べるために、磁場の効果を考慮したsink particle modelの開発を行いシミュレーションを行う。 以上の研究では、研究協力者福井と鳥居と、我々の結果と彼らの観測結果の特徴を互に議論して共同研究を理論観測両面で効果的に進める。 研究成果はまとまり次第査読付き論文として発表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナが世界的に蔓延した結果、2021年に参加を予定していた国際研究会が中止延期となった。この国際会議では分子雲衝突による大質量星形成に関する発表ともに、我々が明らかにした衝突速度の大きな分子雲衝突研究の意義について各国の研究者と議論を進め、さらに主要な研究機関を訪問して研究交流をおこなって研究の発展に寄与する予定であった。現在不確定だが、新型コロナは落ち着く可能性があり、2022年度には開催が期待される国際会議参加費に使用するために本研究費を繰り越すことにした。同時に本研究を遂行に協力した北海道大学理学院宇宙理学専攻博士課程のNirmit Sakreさんが本研究における業績をもとに学位を取得し、2022年度4月から京都大学理学研究科博士研究員として採用された。受け入れ研究者の判断で、彼は本研究に引き続き協力してくれる。本研究費の一部はこの共同研究のために使用する。また、この間の研究によって、衝突速度の大きな場合の分子雲衝突でも、分子雲のサイズによって、大質量星形成の可能性が明らかとなった。この研究を発展させ、銀河中心領域で観測されている分子雲が衝突によって、大質量星形成さらには大質量星の星団形成する可能性を明らかにできると期待され、さらに形成された星団の特徴なども明らかにできる興味深い研究の可能性がある。 そこで、2022年度に以上の研究を遂行するために本研究費を使用する。
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Research Products
(7 results)