2020 Fiscal Year Research-status Report
原始銀河団の系統的探査に基づく銀河団銀河の進化の研究
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19K03924
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋作 一大 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00251405)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 銀河 / 銀河団 / 銀河の進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の宇宙に見られる銀河は、銀河団という集団に属しているかどうかで、その性質が大きく異なっている。その違い (環境依存性と呼ばれている) がいつどのように発生したのかは銀河天文学の大きな問題の一つである。この問題に取り組むには、過去の銀河団 (原始銀河団) の観測が必要である。しかしこれまでの原始銀河団探査は、完全性、純粋性、原始銀河団の物理的定義の明確さに問題があった。本研究は、これらの問題点のない (あるいは大幅に軽減した) 原始銀河団探査法を新たに開発し、z~2 (宇宙年齢30億歳) を主な対象にして実際に探査を行い、銀河団に属する銀河の性質を系統的に調べるものである。
昨年度は実際に新しい原始銀河団探査法を開発し、それをCOSMOSという深探査領域に適用して75個の原始銀河団候補を発見した。そして属する銀河の性質を調べた結果、z~2という過去において弱いながらも既に環境依存性が現れていることがわかった。この結果は、z~2以降に銀河団が大きく進化することを示唆している。そこで今年度は、1<z<2 の時代に研究対象を移して原始銀河団の探査を行なった。使用したデータはすばる望遠鏡の大規模サーベイで得られた広さと深さを両立した撮像データである。まだ選択方法の最適化を行なっている段階のため原始銀河団サンプルは確定していないが、暫定では1000個前後の原始銀河団を同定できている。属する銀河の星形成活動が、同じ時代の一般領域の銀河よりも低めであるという示唆も得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究に用いた多バンド撮像データに比べ、今年度の1<z<2の原始銀河団の探査に使った撮像データは、カバーしている天域は1桁ほど広いものの、バンド数が5つしかないため、銀河の赤方偏移や星形成率の値の不定性がかなり大きい。そのため昨年度と同じ方法をそのまま適用することができず、試行錯誤を必要とした。しかし大きな問題はほぼ解決し、暫定ながらも原始銀河団のサンプルを作成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1<z<2の原始銀河団の選択方法の最適化を行なって最終サンプルを作成する。続いて属する銀河の性質を調べ、一般領域の銀河との比較を通してこの時代の銀河の環境依存性を明らかにする。さらに、より高赤方偏移の原始銀河団の研究 (昨年度の研究) と合わせて、1<z<3での銀河団の進化も議論する。
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Causes of Carryover |
2020年度の使用額が予定よりも少なかった大きな理由は、新型コロナの流行で全ての対面の研究会が中止になり、旅費への出費がなかったことである。2021年度は、旅費に加えて、研究環境の整備、論文掲載料に使う計画である。
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Research Products
(3 results)