2021 Fiscal Year Research-status Report
宇宙からの赤外線分光観測におけるスペクトルの高精度化の研究
Project/Area Number |
19K03927
|
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
石原 大助 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究開発員 (30507835)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 英宏 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30301724)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 光赤外線天文学 / 半導体検出器 / 惑星系形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光分散型の分光観測において、スペクトル形状の決定精度を改善する方法を開発する。 光分散型分光器 (分光素子で分散した光を多画素のアレイ検 出器で受けるタイプ) のデータを解析する際には、(a) 分散光イメージから暗電流や背景放射等のスカイを差し引き、(b) 装置の感度 (感度の波長依存性) を補正する。そのため、これら較正プロセスの精度が、スペクトル形状の決定精度に影響する。 とくに、衛星からの光赤外線観測などの、低背景放射環境では、(a) の内、暗電流の寄与が相対的に大きい。解析で (a) の、実験で (b) の、それぞれの精度向上を図り、実際の観測において、スペクトル形状を精度良く決定する方法確立に繋げる。 今年度も、昨年度に引き続き、赤外線天文衛星「あかり」で取得した分光データを用いて、主に (a) の分散光イメージからの暗電流の差し引き精度の向上に取り組んだ。 暗電流の差し引き精度が、スペクトル形状の不定性の主要因となる、「あかり」の冷媒枯渇後の、検出器の熱電流が卓越する環境で取得したデータを対象に、暗電流の温度依存性をピクセル毎に精度良く決め、光分散されたイメージデータから、暗電流を精確に差し引く方法を模索した。 暗電流の温度依存性のピクセル依存性を、ショットノイズレベル以下の精度で求め、観測データに適用することはできたが、スペクトルに乗る典型的な較正エラー起因の偽形状に、対象天体の明るさ依存性が見られることから、このデータに対して、(b) も総合的に改善する必要があることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検出器の熱電流の見積り精度が、スペクトル形状決定精度に支配的に効いていると思われる、赤外線天文衛星「あかり」が冷媒枯渇後に取得した、近赤外線分光データを対象に、スペクトル形状精度改善の研究を進めていた。アレイ検出器における、各ピクセルの暗電流量の温度依存性を、温度の関数で精度良く記述することで、光を分散させたイメージ上の強度ムラの誤認識、すなわちスペクトルの偽形状成分を、劇的に軽減できる予定であったが、スペクトルの偽形状成分と見られる物に、温度依存性だけでなく対象天体の明るさ依存性も見られることが分かり、当初予定していたアプローチのみでは、不十分であることが分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
アレイ検出器における、各ピクセルの暗電流量の温度依存性を精度良く決め、 分光観測データから暗電流を精度良く差し引くだけで、スペクトル形状精度を改善できるデータもある。ただし、研究対象として利用している赤外線天文衛星「あかり」が冷媒枯渇後に取得した近赤外線分光データの較正には、他にも形状精度を悪化させる要素が残っているため、全てのデータで、前述の工夫の効果を定量的に評価できていない。 そこで、今年度は、他にも改善すべき較正上の課題を一つずつ対処してゆく、もしくは、当初予定していた工夫によって改善する成分を分離して定量評価する、の両面を試してゆく。
|
Causes of Carryover |
前述の解析を進めるための計算機・記憶媒体の追加購入、および論文出版費に使用する。
|
Research Products
(1 results)
-
[Journal Article] The formation of planetary systems with SPICA2021
Author(s)
Kamp, I., Honda, M., Nomura, H., Audard, M., Fedele, D., Waters, L. B. F. M., Aikawa, Y., Banzatti, A., Bowey, J. E., Bradford, M., Dominik, C., Furuya, K., Habart, E., Ishihara, D., Johnstone, D. , Kennedy, G. , Kim, M., Kral, Q., Lai, S. -P. 他20名
-
Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Australia
Volume: 38
Pages: 55
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research