2019 Fiscal Year Research-status Report
可視光観測による OJ 287 の歳差連星モデルの検証
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19K03930
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
松本 桂 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (90362748)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / OJ 287 / 歳差連星ブラックホールモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的であるOJ 287 の歳差連星ブラックホール(BH)モデルの妥当性を検証するにあたり、特に2019年度は7月末に起こると予測されていたout-type の熱的フレア(伴BHが地球から見て主BHの降着円盤の反対側から手前側へ突き抜ける際の増光)、およびその前後の挙動の解明が焦点であり、可視光での測光観測を継続的に実施した。この2019年7月の増光は、歳差連星BHモデルに基づけば、2015年11月~12月に生じた in-type の熱的フレア(伴BHが地球から見て主BHの降着円盤の反対側へ突き抜ける際の増光)のペアとなるものである。7月末の時期そのものには同天体は太陽と合となるため地上からの観測は不可能であるが、その前後に予測外の増光は起きていないことが明らかとなった。また Spitzer 宇宙望遠鏡を使用した赤外線での観測グループとの共同研究により、7月末に予測されていた熱的フレアの発生を確認し、それが前回の out-type フレアである2007年の熱的フレアと極めて類似する挙動を示したことが明らかとなった(論文は2020年5月に出版)。これは、2015年の in-type フレアからわずか3年半後にペアとなる out-type フレアが起きたことを強く示唆するものであり、OJ 287 において素朴に約12年周期で増光を繰り返すことを前提とする理論モデルでは説明が極めて難しい。したがって、今年度の研究からは、歳差連星BHモデルが予測する、OJ 287 の熱的フレアの12年周期からの大きな逸脱が観測的に確かめられ、歳差連星BHモデルの妥当性を示す証拠がまたひとつ積み重ねられたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を通しての大きなねらいである、OJ 287 の歳差連星BHモデルの検証を前進させることになる2つの結果(2019年および2022年に生じると予測される熱的フレア)のうち、2019年の熱的フレアの結果を初年度に得ることができたため。すなわち、今年度の目標であった、研究目的の(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性の①に記載した、2019年度における熱的フレアの前後を含む OJ 287 の可視光域における挙動を十分なクオリティで観測し確認することができた。また②に記載したno-hair 定理に関係する係数に制限が付けられ、現在の精度の範囲内においてno-hair定理の観測的検証が成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の経費で導入し既に実働を始めているCCDカメラを用い、当初の計画通り、来年度以降も継続的な OJ 287 の測光モニタを実施する。またそれにより、歳差連星BHモデルに従う、または矛盾する観測的挙動が示されるか検証を続ける。それらの成果は、次回に予測される2022年の in-type の熱的フレアに至るまでにおいてOJ 287 が示す長期間の測光学的挙動の基礎データとなり、約60年前の測光結果との比較に用いることができる。2019年7月の熱的フレアの後の観測から、OJ 287の活動性が増していることを既に把握している。このような活動性はジェットのシンクロトロン放射に起因していると考えられており、2007年および2015年の熱的フレアの後にも観測されていることは良い比較材料になると思われる。また既に取得した2019年度の SOHO LASCO C3 のアーカイブデータを用いて、可視光域での2019年7月フレアが検出できるかどうかを試みる。もしこれが成功すれば、赤外線観測から得られた結果を強く補強できることになる。
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