2022 Fiscal Year Research-status Report
可視光観測による OJ 287 の歳差連星モデルの検証
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19K03930
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
松本 桂 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (90362748)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / OJ 287 / 歳差連星ブラックホールモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
OJ 287 の歳差連星ブラックホール(BH)モデルを検証するにあたり、特に2022年度は7~8月に起こると予測されたin-type の熱的フレアおよびその前後の挙動の解明が焦点であり、可視光での多色測光観測を継続的に実施した。概観としてはOJ 287は小規模な増減光を示しつつ減光傾向にあり暗い状態が続いている。2023年4月にはRcバンドで約16等、Bバンドで約17等に至った。これは同天体の長期的なトレンドを見ている可能性がある。 2022年7~8月の増光は歳差連星BHモデルに基づけば2019年のout-type の熱的フレアに続くものであり、現在は、同モデルの特徴である大きな歳差角による伴BHの軌道配置の変化により増光間隔が2015、2019、2022年と、いわゆる12年周期から大きく逸脱する時期にあることを検証する機会にある。その結果、まず伴BHが主BHの降着円盤に衝突した際に予測される(熱的フレアを引き起こす熱制動放射の発生に先行する)小規模な増光を2022年1月に検出することに成功した。メインの熱的フレアの期間である7月10日頃から約1か月間は太陽との合と完全に重なるため地上からの観測は不可能であったが、その前後に予測外の増光は起きていないことを確認した。特に合が終わる際、おそらく地上からの観測としてはこれまでで最も早い8月28日にRcバンドで約15.5等と有意に暗い状態であることを確認した。この観測は増光の発生時期に強い制限を付け、伴BHの衝突が降着円盤のほぼ同じ場所で起こった2005年時とは円盤の状態に差異があることによる増光時期予測の補正を導いた。結果として2022年の観測結果は、歳差連星BHモデルから予測される挙動の推移とよく一致しており、したがって2022年の熱的フレアの発生は太陽との合の時期と一致してしまった蓋然性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OJ 287 の歳差連星BHモデルの検証となる2019年および2022年に生じると予測された2つの熱的フレアの結果を得ることができており出版もされている(後者は受理済で2023年度に出版)。また2019年度から2022年度までを通じて継続的な観測を実施できており、歳差連星BHモデルの帰結である長期変動を検証するための基礎データの取得が進んでいる。2022年7月の熱的フレアに関しては、太陽との位置関係により地上からは明瞭な観測的兆候をとらえられていない一方、その前後に得られた観測結果は歳差連星BHモデルが予測した描像と一致している。また予測外の熱的フレアに相当する増光も明らかに生じていなかったと今のところ結論付けられる。特に当初の目論見通り8月下旬から観測を開始することができた結果、歳差連星BHモデルの枠組みによる熱的フレアの発生時期に強い制限を与えることができた。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
OJ 287 の歳差連星BHモデルによれば、2022年の次の熱的フレア(out-type)は2031年と予測されており、増光現象を用いた連星モデルの検証の機会は当分やって来ない。しかし2022年の熱的フレアは明確な検出による検証はされていないことから、予測外の変動が生じないか確かめることは必要であろう。また継続的な多色観測は次回の熱的フレアへ至る過程における光学的挙動の基礎データとなる。したがって2023年度も当初の計画通り2019年度の経費で導入したCCDカメラを用い、継続的な OJ 287 の測光モニタ観測を実施したい。それにより、歳差連星BHモデルに従う、または矛盾する観測的挙動が示されるか検証を続ける。また同天体の長期的挙動を把握する。
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Causes of Carryover |
本研究課題に用いている大阪教育大学天文台の口径50cm反射式望遠鏡の内部において、赤経軸の断線による障害が2021年頃から断続的に発生していた。放置することで研究の遂行が不可能になる可能性を憂慮し、2022年度に本経費の一部から50cm望遠鏡の修理を行った。その結果、上記の不具合は解消され、研究の遂行をより確実とすることができた。次年度使用が生じた理由はこの支払時における残額である。また、昨年度の研究実施計画に記載した通り2020年度の前倒し使用により経費の執行計画の見直しを行い、導入予定の機器の構成等を変更することとしていたが、来年度は当初計画よりも使用可能な経費が減少するため、その一部として使用する計画である。執行計画の見直しによる制約は受けることになるが、若干であり、研究課題の本質的な部分に変化はなく、これまで通り遂行可能である。
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