2019 Fiscal Year Research-status Report
低アルフヴェン・マッハ数の太陽風に対する地球磁気圏・電離圏の応答の研究
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19K03947
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
西野 真木 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50466794)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 太陽風 / 地球磁気圏 / アルフヴェン・マッハ数 / 宇宙天気 / 低密度太陽風 / 磁気圏境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2007年の低密度太陽風イベントに着目して衛星データ解析およびグローバルシミュレーションをおこなった。このイベントのアルフヴェン・マッハ数(MA)は平均(5程度)よりかなり低い2.0であり、惑星間空間磁場は典型的なパーカースパイラルであった。まず、GEOTAIL衛星観測データの解析をおこない、磁気圏が朝方側に大きく膨らんでいることを示すとともに、磁気圏境界面付近でリコネクションによる高速流の発生を確認した。次に、これらの観測結果をBATSRUSコードによるグローバルシミュレーションと比較した。シミュレーション結果ではGEOTAILの付近に磁気圏境界があり(すなわち、磁気圏が朝側に広がり)、かつ、磁気圏が夕方側には広がっていないことを確かめ、低MAの太陽風条件下で磁気圏の形状に顕著な朝夕非対称が現れることを示した。この結果はこれまでの統計結果から示唆されてきた朝夕非対称に整合的であり、特に惑星間空間磁場がパーカースパイラルである場合には磁気圏が朝方側へ膨張していることが示された。 また、このように朝方側に磁気圏が広がる理由の一つはバウショックとマグネトシースの非対称に起因するが、別の理由として太陽風速度の朝夕成分が比較的大きい場合があることがわかった。後者の理由は太陽から低密度の太陽風が吹き出す際に共回転方向の速度成分を持つことが多いという先行研究結果と整合的である。以上のことから、低MA時には太陽表面から惑星間空間に至る広大な領域で特徴的な現象が起きていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2007年の低密度太陽風イベントの解析結果は論文執筆中である。 2019年以降は新たな低密度太陽風イベントが少なく、当初予定していた高時間分解能の磁気圏境界層の解析が実施できていない。そのため、2年目以降に予定していた電離圏データの初期解析をおこなったため、当初の計画から遅れが生じている。 なお、低密度太陽風イベントとの比較対象として通常の太陽風密度での磁気圏プラズマシートの解析をおこなった結果、磁気圏プラズマシートのプラズマ輸送に関する新たな知見を得ている(論文執筆中)。
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Strategy for Future Research Activity |
惑星間空間磁場が北向きかつ低密度太陽風のイベントについて、通常の太陽風密度における磁気圏プラズマシートのプラズマ輸送との比較をおこなう。特に、太陽風起源の低エネルギーイオンの沿磁力線方向の運動に着目し、イオンのエネルギー分散の有無を調べる予定である。 低密度イベントのグローバルシミュレーションに関して、これまで用いてきたBATSRUSコードに加えて、電離層の計算精度が高い藤田茂氏(気象大学校)のコードを用いた計算をおこなう予定である(初期的な計算は開始済)。 MMSの軌道変更によって低密度イベント時に磁気圏境界面を観測できる可能性が高まっており、今後の高時間分解能データの取得が期待できる。
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Causes of Carryover |
日程的都合により国内学会への参加を取りやめたことや、新規の計算機の購入を見送ったことによって、次年度使用額が生じた。これはデータ解析環境の整備や論文投稿料として使用する予定である。
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