2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K03953
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松清 修一 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (00380709)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 太陽圏境界 / 宇宙線 / 粒子加速・輸送 / 微物理特性 / MHD計算 / フル粒子計算 / テスト粒子計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
さまざまな地球周回衛星の観測データがOMNIデータとしてNASAにより公開されている。このOMNIデータを用い、地球軌道(1AU)における日ごとの太陽風の情報を入力として、1AU以遠の太陽圏の大規模構造を再現する3次元MHD計算コードを開発した。さらに1次元フル粒子計算を用いて、MHD計算で見られる2つの不連続面(終端衝撃波、太陽圏界面)の内部構造と、不連続面が波動(乱流)の伝搬に及ぼす影響を調べた。太陽圏界面の遷移層で、流体(MHD)近似ではとらえられない内部構造があることを示し、その特性スケール長は無衝突プラズマ特有のものになることを明らかにした。また、終端衝撃波と太陽圏界面の間にあたる内部ヘリオシースで励起された波動のうち、速進波だけが太陽圏界面を透過して星間空間に伝播することができることを示した。速進波は圧縮性波動の一種であり、この結果はボイジャーによって星間空間で圧縮性波動が観測されている事実とも整合的である。(当初計画課題Aに相当) 上に加えて、3次元MHD計算で得られた電磁場データを用いて、銀河宇宙線の太陽圏内への侵入過程を調べるテスト粒子計算を行った。まず、銀河宇宙線は、そのエネルギーによらずに太陽圏界面のいたるところから圏内に侵入することが分かった。侵入後の経路は様々だが、比較的低エネルギー(< 100GeV)の粒子は、太陽風赤道の電流シートを通って短時間で圏内深くまで到達するもの、太陽風のスパイラル磁場に巻き付くかたちで長い時間をかけて内部に到達するものなどがある。一方比較的高エネルギー(~1000GeV)の粒子は、サイクロトロン半径が太陽圏サイズと同程度になるため、より簡単にかつ短時間で圏内深くにまで侵入する。ただし、これらの高エネルギー粒子の中には、太陽圏の大規模構造に共鳴的に応答して複雑な軌道を示すものがあることも分かった。(当初計画課題Cに相当)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書で3つに大別した課題A,B,Cのうち、2つ(A,C)について具体的な成果が上がっている。Bについてもすでに計算を開始しており、2年目には成果として報告できる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って進めていく。MHD計算では、OMNIデータの取り込みにより、過去にない精度での太陽圏構造の時空間発展を再現し、ボイジャーのデータと比較する。またこれと組み合わせて行う宇宙線侵入過程のテスト粒子計算では、エネルギーごとに粒子軌道のタイプを精査して論文にまとめる。最終的に地球に到達する粒子の統計を議論するため、波動によるピッチ各散乱の効果を計算モデルに取り込む。フル粒子計算では、すでに開始している2次元計算を本格化し、ピックアップイオンの加速機構を明らかにする。
|
Research Products
(7 results)