2020 Fiscal Year Research-status Report
Geological analyses of the lunar south polar region
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19K03959
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
佐藤 広幸 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, グループ長事務代理 (70816082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 真紀子 会津大学, コンピュータ理工学部, 教授 (30373442)
嵩 由芙子 会津大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (50828035) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 月極域 / チタン量分布 / エジェクタ / 地質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、月南極域(緯度70°S以南)において最新の探査データを用い、既存の地質図を更新する。これにより極域の地表構成物質・地質構造を詳細に把握し、3つの月科学における課題:①月地殻成長プロセスとマントル物質、②永久影内部および周辺の構成物質、③宇宙風化の主要因、を月極域で検証する。 令和元年度(1年目)は、日本月周回衛星(かぐや)のマルチバンドイメージャ(MI)のモザイク画像に発生するノイズ低減処理のため、かぐやの軌道精度改善を行った。一方、米国月探査衛星(LRO)の広角カメラ(WAC)を使ったモザイクでは、月の高地領域でのチタン量マップを作成した。 令和2年度(当該年度)は、この月高地チタン量マップについて精度検証を行った。その結果、チタン量算出値に明らかな矛盾は見られなかった。算出アルゴリズムの適用外と考えられていた、地表露出年代の若いクレータ堆積物(エジェクタ)については負の値を示し、データからも適用外であることが示された。一方、1年目にノイズ低減処理をしたMIのモザイクデータについては、疑似カラー・宇宙風化度・Mg-Fe比(Mg#)マップを作成した。これらのマップを元に、エジェクタの分布領域の判別・数値地図化に着手した。 これまでの判別で、緯度77°Sにある直径56kmのクレータ(De Forest)のエジェクタが広大な領域(月南極域の約1/4)に広がっている事がわかった。また、中緯度域(緯度43°S)のクレータから伸びる細長いエジェクタ(レイ)が南極域を縦断している事がわかった。南極域における堆積物の分布は、これまで地形のみで判別されてきたが、高解像度カラー画像を使ったスペクトルによる判別は本研究が初であり、上記のエジェクタ分布についても本研究で初めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)各種マップデータベースの作成、(2)地質ユニット・構造の位置情報数値化、(3)地質ユニットの分類、層序関係の解析、の3つのステップを経て月南極域の新しい地質図を作成し、その後月科学における3つの課題の検証を行う。 (1)は全ステップ中最も時間を要する作業であるが、当該年度でほぼ完了し、残り2種のマップ(鉄・斜長岩)作成を残すのみである。(2)についてはすでに着手済みである。次年度では、引き続き(2)および(3)の作業を分担者と同時並行で行い、年度後半から3つの課題の検証に移行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度始めに、残る2種のマップ(鉄・斜長岩の分布)作成を行い、マップデータベースの作成作業を完了する。各種マップデータベースはすべてGISソフトウェアに取り込み、レイヤーを適宜切り替えながら、地質ユニット・構造の位置情報数値化を行い、地質ユニットの分類・層序関係の解析を進める。この地質解析作業は、当該年度に引き続き次年度前半まで行い、作業完了を目指す。その後、3つの月科学における課題:①月地殻成長プロセスとマントル物質分布、②永久影内部および周辺の構成物質、③宇宙風化の主要因、を検証するための解析を始める。 ①については、すでに作成済みのMg-Fe比(Mg#)マップを低・中緯度の既存マップにはめ込み、全球的なMg#の傾向を捉えることにより、月地殻成長プロセスに制約を与える。 ②については、地質ユニット(特にエジェクタ堆積物)の分布と永久影の位置から、各永久影内部に予想されるエジェクタの範囲と量を推定する。 ③については、宇宙風化度マップ(作成済み)の精度検証を幾つかのローカルな斜面で行い、その後エジェクタ分布域を除いた地域において(地質ユニットマップを使用)、宇宙風化のグローバルな緯度依存性を検証する。観測された緯度依存性の傾向と、宇宙風化の要因別の緯度依存性推定との比較から、月における宇宙風化の主要因について制約を与える。これらの作業を次年度後半に行い、同時に論文執筆を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、急遽オンライン開催となった国際学会(Lunar and Planetary Science Conference:米国・ヒューストン)に参加したため、その分の旅費が持ち越され、次年度使用額が生じた。また、予定より性能の高いデータ解析用計算機を安価に購入できたため、次年度使用額が増えた。 これらの次年度使用額分については、購入を予定しているデータ保管用ストレージサーバのスペック増強、データ解析用計算機の内部ストレージ補強、および、分担者の国際学会参加旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)