2020 Fiscal Year Research-status Report
Change in the North Pacific subtropical gyre due to global warming and its climatic influence
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19K03969
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
小橋 史明 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80377077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾形 友道 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 研究員 (60716679)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 亜熱帯循環 / 水温躍層 / 温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,温暖化による北太平洋亜熱帯循環の変化とそれが気候へ及ぼす影響を明らかにすることである.今年度は,気候モデルCommunity Earth System Model(CESM)による過去シミュレーション(1920-2005年)の大規模アンサブル資料(CESM NCAR Large Ensemble,42メンバー)および気象庁東経137度定線観測資料(1972-2019年)を主に解析し,亜熱帯モード水の長期変動とそれが海洋構造に及ぼす影響を調べた.亜熱帯モード水は,黒潮および黒潮続流の南方海域に発達する冬季の深い混合層で形成される.CESMの解析から,1920-2005年の期間において,冬季混合層は黒潮および黒潮続流の上流域で浅くなる一方,黒潮続流の下流域では有意に深くなることがわかった.この混合層の深化により,黒潮続流下流域において厚い亜熱帯モード水が形成される.厚い亜熱帯モード水は,水温躍層へ沈み込み,亜熱帯中央部において上部水温躍層を持ち上げ,亜表層から海面付近にかけて低水温偏差をもたらすことがわかった.亜熱帯域の海面水温は,温暖化により概ね昇温傾向を示すが,亜熱帯モード水による水温躍層の持ち上げが見られる海域では海面水温の昇温が小さく,亜熱帯モード水が局所的に昇温を抑制している可能性が示唆される.これらの変化は,メンバー間のばらつきが小さく,統計的に有意であることから,数年から数十年周期で起こる自然変動ではなく,温暖化に起因すると考えられる.また,亜熱帯モード水に伴う上部水温躍層の変動は,北太平洋中央部の風系に起因する亜熱帯モード水の十年規模変動においても同様に生じていることが東経137度定線観測資料の解析から明らかになった.これら成果の一部は学術誌に発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜熱帯モード水の長期変動と亜熱帯域の水温に及ぼす影響に関する研究については当初の計画より早く進んでいる.一方,亜熱帯循環系の長期変動に関しては解析が若干遅れているが,研究実績の概要で述べたように,すでに成果の一部を学会や学術誌に発表しており,全体としては,概ね順調に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
数値モデルの計算結果および海洋再解析資料の解析を進めて,亜熱帯循環系の長期変動と亜熱帯モード水の形成の変動との関連を明らかにし,研究全体のつながりを整理することにより,研究を加速させる.次年度は最終年度となるため,これまでの成果を積極的に発信する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行による出張の取り止めや学会のオンライン開催への変更により旅費の支出が減少した.今年度の学会参加費および論文投稿費として使用する予定である.
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