2019 Fiscal Year Research-status Report
森林から大気へのアミン発生とその新粒子生成への寄与
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19K03971
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
松本 潔 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60373049)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アミン / エアロゾル / 新粒子生成 / 森林 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林大気におけるアミン化合物の発生メカニズムと動態を解明するため、富士山北麓の森林内に位置する富士山科学研究所実験林において、大気エアロゾルを多段式インパクターにより分級採取した。同時に、ガス相中アミン化合物を酸含侵フィルター法で採取した。これら試料はおよそ2週間間隔で、2019年5月より継続的に行なった。 フィルター試料は超純水で抽出後、アミン化合物の分析に供した。陽イオン交換樹脂カラムと電気伝導度検出器を組み合わせたイオンクロマトグラフ法により、モノメチルアミン(MMA)、モノエチルアミン(MEA)、ジメチルアミン(DMA)、ジエチルアミン(DEA)、トリメチルアミン(TMA)、トリエチルアミン(TEA)の分離・定量を達成し、前処理も含めた分析方法を確立した。 ガス相と微小粒子相では、DMAが最も高濃度で含まれていた。DMAは夏季から冬季にかけて濃度が減少する傾向を示し、森林での生物活動が発生源として重要である可能性が示唆された。次いでDEA、TEAが多く含まれていたが、DEAは季節的な濃度変動を示さず、TEAは秋季から冬季にかけて濃度が高いなど、アミン化合物によって発生メカニズムが異なる可能性が示唆された。また、MMA、DMA、DEAは微小粒子相に比して粗大粒子中濃度は低かったが、MEA、TMA、TEAは微小粒子相に匹敵する濃度で粗大粒子中にも検出され、異なる発生源を示唆していた。 試料採取中にフィルター上での反応によりガス相またはエアロゾル中アミン化合物濃度が過少または過大評価されている可能性があり、これを検証しより精度の高いデータを得るべく、デニューダフィルターパック法によるサンプリングを確立するための試験的試料採取も行なった。捕集効率などの性能データを蓄積の後、フィールドデータの検証に用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
富士山科学研究所実験林をフィールドとしたエアロゾル及びガス相中アミン化合物の通年試料採取体制を構築、試料採取を開始し、およそ1年間継続的に試料採取を行なった。また、モノメチルアミン(MMA)、モノエチルアミン(MEA)、ジメチルアミン(DMA)、ジエチルアミン(DEA)、トリメチルアミン(TMA)、トリエチルアミン(TEA)の分離・定量を達成、前処理も含めた分析方法を確立し、およそ半年分の試料分析も完了した。発生源プロセスの解明や新粒子生成への寄与の評価に関する観測はまだ始めていないが、概ね計画に従い進んだと判断し、上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
富士山科学研究所実験林フィールドにおけるエアロゾル及びガス相中アミン化合物の試料採取を引き続き進める。分析も並行して行なうが、アミン化合物だけでなく、発生源の指標物質となるエアロゾル中の他成分、その前駆気体の分析も進める。 デニューダ・フィルターパック法によるガス相及びエアロゾル中アミン化合物の高精度での採取法を確立し、これを用いてフィールドデータを検証する。 1年間以上のデータの蓄積を待って、気象因子、大気化学因子、生物学的因子も含めた統計解析を行い、森林大気におけるアミン化合物の発生メカニズムを明らかにすると同時に、微小粒子をより細かく分級したエアロゾル試料も採取し、その新粒子生成への寄与についても議論する。
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Causes of Carryover |
試料の採取と分析に必要な消耗品の購入は概ね計画通りであったが、一部消耗品の購入を次年度とした。その分次年度使用額が生じたが、これは予定通り消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)