2021 Fiscal Year Annual Research Report
貧栄養化が進む日本沿岸の基礎生産量変動の実態解明:伊勢湾を例として
Project/Area Number |
19K03972
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石坂 丞二 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (40304969)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貧栄養化 / 伊勢湾 / 植物プランクトン / クロロフィルa / 海色衛星 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では世界に先駆けて栄養塩の負荷量削減が行われてきたが、近年は逆に貧栄養化で生物生産の減少が懸念されている。しかし、時空間変動の大きい基礎生産については、その長期変化の実態は把握されていない。本研究では、特に日本の代表的内湾である伊勢・三河湾に注目して、これまで活用されていなかった長期の衛星データによって、クロロフィルa(Chl-a)のデータセットを作成し、この高時空間解像度のデータから変動・変化を明らかにした。海色衛星センサーSeaWiFSとMODISAを用いて,1998年から2014年について、推定精度を向上したChl-aを求めた。Chl-aの17年間の空間・月平均値は,夏季に高く,冬季に低く、これは伊勢湾への河川流入量の月平均値と対応していた.また伊勢湾では湾口よりも湾奥から三重県沿い、また三河湾では全域で季節変動が顕著であった.経年的には大きな偏差が散発的に観測され、3~11月ではその多くが、大出水と対応した。1日毎のデータによると,流量の極大時から数日程度でChl-aの極大が観測され,流量の高い時に伊勢湾の三重県側,低い時に知多半島側のChl-aが高く、これは河川プルームに対応すると考えられた.これらのデータを用いて、各月のChl-aの平均値から長期トレンドを求めたが、いずれの月も統計的に有意な長期トレンドは観測されなかった。この結果は、最近まとめられた現場観測データのChl-aの減少傾向と対応しない。これは、1)処理した衛星データで校正の経年変化が充分に補正されていない、2)衛星データは空間的に密なデータを取得できるが、雲などの影響でそれぞれの年での変動が大きい、3)現場観測では過小評価され衛星では観測される微小プランクトンの割合が増加している、などの原因で長期変化が埋もれてしまっている可能性が考えられた。今後さらにこれらの要因を考慮して解析をする必要がある。
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