2020 Fiscal Year Research-status Report
台風等に対する航空機搭載フェーズドアレイ気象レーダによる観測システムの構築
Project/Area Number |
19K03973
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 暢宏 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60425767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 広幸 琉球大学, 理学部, 准教授 (30421879)
牛尾 知雄 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50332961)
金田 幸恵 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (80727628)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 台風 / フェーズドアレイレーダ / 雲物理量 |
Outline of Annual Research Achievements |
第2年次の研究として、航空機観測のシミュレーションとその結果のレーダシステムへの反映、および航空機による台風観測に向けた人工衛星および地上レーダ(MP-PAWR等)を用いた解析研究を計画し、実施した。 前者については、簡単化した台風のモデル(風速場およびレーダ反射強度場)を作成し、航空機観測として台風の周辺を円周状に飛行するケースと台風の目の上空を直線的に横切るケースを想定して観測の可能性・風速場およびレーダ反射強度場の再現性について評価を行った。その結果、現在検討していたレーダの仕様(走査角度、走査周期、分解能など)により十分観測ができることを確認できた。さらに、偏波レーダの観測特性の再現のため、NASA/GISSの T-matrix法による散乱計算プログラムを導入し、特に、霰や氷晶などの固体降水粒子の後方散乱および前方散乱の計算を実施し、実装できることを確認した。 後者については、主にマルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)とGPM主衛星搭載2周波降水レーダ(DPR)を用いた解析手法の検討を継続した。MP-PAWRを用いた解析では、MP-PAWRのように連続的に立体観測が可能なレーダの偏波パラメータおよびドップラー速度を用いた運動場の解析が降水システムの発達のプロセスなどを解明することに大きく役立つことが示された。また、GPM/DPRの観測データと地上レーダを用いて0℃高度以上における降水粒子の特徴を比較したところ、両者の観測が相補的であることがわかった。台風を降水システムとして考えた時に、固体降水(雪、氷晶、霰等)の空間分布とその生成プロセスが未解明であることから、この結果は、台風の航空機搭載偏波レーダ観測を人工衛星搭載レーダの観測と同期させることにより、効果的な観測ができることが意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、第2年次には1)台風観測への要求条件の整理(継続)、2)レーダのシステム設計(継続)、3)航空機観測のシミュレーション、4)人工衛星搭載レーダによる降水物理量の推定(継続)、5)地上設置マルチパラメータフェーズドアレイレーダによる運動場・雲物理量の推定(継続)を実施する計画であった。 1)については、1年次にほぼ完了した。また、2)については、3)のシミュレーションにより現在の想定している仕様で問題ないことを確認した。3)のシミュレーションでは、基本的な部分である航空機のフライトパス、レーダの観測点の設定、偏波パラメータの計算手法が確立できた。4)5)については、継続的に研究を行うことにより、研究結果をまとめるフェーズにたどり着いた。
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Strategy for Future Research Activity |
航空機搭載レーダによる台風観測のシミュレーションを実際に数値モデルで計算した台風に対して実施する。ここでは、台風が時間変動することも考慮することから、航空機観測が観測した物理量が実際に変化している台風をどのように表現できるかなど検討を行う必要がある。 これらをベースに航空機観測を中心とした観測システムの構想を行う。 これらの研究から航空搭載偏波レーダ開発の提案に発展させる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、出張による打ち合わせが実施できなかった。これらは、次年度における旅費に活用する。また、これまでの結果からいくつか論文として出版できる見通しが立ったので、論文出版経費に充てる。
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