2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K03975
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
西 憲敬 福岡大学, 理学部, 教授 (00222183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 篤 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (30550008)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 積雲クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
全球雲解像モデルNICAMの実験出力を用いて、熱帯収束帯内でみられる大規模雲域の南北分割現象についての解析をおこなった。本年度は、那須野智江氏によって実施された2008年6月のRUNの出力を用いた。本年度の出力解析で最も興味深かったのは、現実大気での分割が発生したのとほぼ同じ場所・時刻にモデル出力にも分割現象が認められたことであった。モデルの初期値には、初期の雲帯の発生も広域同時分割も起こさせるための「種」が含まれていたとみられる。現実大気ではどちらかというと帯状というよりは円弧状であること、現実大気では1カ所の分割だが、シミュレートされたものは東西の2カ所で分割が起きていること、などの違いはあるが、積乱雲中心の雲帯から巻雲中心の大きな雲域の広がりがあるという点では酷似している。南北へ拡大中の巻雲域において、以前に別例で調べたときにみられたような、慣性不安定に代表されるような不安定性がこの例での東西同時拡大の原因と考えられるかどうかについても検討した。典型的な慣性不安定発生の必要条件である地衡風絶対渦度が北半球で負になるという条件を調べようとしたが、低緯度であるために計算された地衡風には小スケールの乱れが卓越していた。そこで、地衡風絶対渦度をあきらめ、拡大初期の絶対渦度を調べた。対流性の帯の北側では北ほど西風が強くなる分布となり、慣性不安定発生に有利な負の絶対渦度が形成されたとみられる。しかし、分割域東部では雲はむしろ初期の帯より南側に広がっていて、そこは慣性不安定条件を満たす領域ではないことなど、説明のつきにくい特徴もみられることから、現時点では慣性不安定はまだ分割発生の原因のひとつの候補であるという認識である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値計算結果の解析に重点を置いて研究を行った。現実大気に起きた現象に対応する事例が数値計算上でみつかるなど、研究の今後の進展に明るい材料があった。研究全体のバランスは当初予定と異なるが、進度はほぼ予定どおりだといえる。年度末に行う予定であった研究打合せなどの一部がコロナウィルスのために中止になり、年度末にやや進度が落ちた面もあるが、これは不可抗力であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、東京大学大気海洋研究所との共同研究の枠組みにおいて、これまでのような既存の実験結果の解析だけでなく、自前の数値実験を行う予算を得た。これを用いて全球雲解像モデルの実験を行っていく。2020年5月現在、出校も原則として禁止されており、出張はほとんど不可能な現実がある。この状況はしばらく続きそうであるため、それへの対応を考えながら研究を行う必要がある。
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Causes of Carryover |
年度末にCOVID-19のために出張が直前にキャンセルとなったため。2020年度に出張は持ち越しているが、現在のところ何時それが可能になるかの見通しは難しい。
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