2022 Fiscal Year Research-status Report
海洋の物質鉛直輸送に伴う微量金属のフラックス及び生物地球化学的プロセスの解明
Project/Area Number |
19K03979
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山岡 香子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30610399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セジメントトラップ / 微量金属 / 鉄同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、海洋における微量金属の循環において沈降粒子が果たす役割に注目し、北太平洋の東経175度ラインに沿って実施されたセジメントトラップ試料及び直下で採取された表層堆積物の元素分析を行い、微量金属フラックスとその変動要因を明らかにする。さらに、特に生物の必須微量金属として重要な鉄の同位体分析を行って、海洋の物質鉛直輸送に伴う鉄の生物地球化学的プロセスを解明することを目的とする。これまでに、セジメントトラップ試料のバルク元素分析を行い、Site 6 (30°N, 亜熱帯海域)、Site 7 (37°N, 遷移帯海域)、Site 8 (46°N, 亜寒帯海域)における沈降粒子構成成分と元素組成の関係を明らかにした。今年度は、セジメントトラップ試料の鉄安定同位体測定を実施した。各地点(n=4)における鉄同位体組成(δ56Fe)の平均値(±1σ)は、Site 6で-0.08±0.02‰、Site 7浅層で-0.05±0.04‰、Site 7深層で-0.17±0.04‰、Site 8で-0.24±0.09‰であった。これらの値は大陸地殻の平均的な値+0.1‰よりも低いが、Site 6及びSite 7浅層のδ56Feは、これまでに報告されている風成塵や遠洋性粘土の値の範囲であった。Site 7深層のδ56Feは浅層よりも約0.1‰低く、鉄マンガン酸化物の影響が考えられる。Site 8の値は、Site 6とFeの余剰フラックスが同程度にも関わらずδ56Feは0.1‰以上低く、鉄マンガン酸化物に加えて生物による取り込みが影響している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は産前産後休暇・育児休業を取得し、研究を中断したため、研究期間を1年間延長した。今年度は4月から研究を再開し、育児に伴う時間的制約があるものの分析作業の効率化に努め、研究計画に沿っておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度にあたるため、データの取りまとめ及び成果公表に注力する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大の影響ならびに育児による制約のために、学会や打ち合わせがオンライン形式となったため、旅費の未使用額が生じた。次年度は、分析補助のためのテクニカルスタッフ雇用費、試薬・消耗品費の購入、英文校閲費等に使用する。
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