2019 Fiscal Year Research-status Report
有珠山の次期噴火予測対応研究:洞爺カルデラと有珠山の全噴火史解明
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19K03983
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 芳彦 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20221252)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 火山 / 防災 / 有珠山 / 地域貢献 / 国際研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
有珠山の噴火史に関する研究は大きな進展があった。有珠山の山体崩壊により形成された善光寺岩屑なだれ堆積物について詳細な層序学的地質調査を行い、善光寺岩屑なだれ堆積物の年代測定(14C法)を行った。これにより,有珠山の山体崩壊年代が1万6千年前であったことを解明できた。有珠山は1万9千年前に活動を開始し、安山岩質の成層火山を形成した後、約3000年以内に山体崩壊したことが明らかになった。このような早期の崩壊は、有珠山の基盤をなす洞爺火砕流堆積物が脆弱であり、その上に成層火山が形成されていることに起因する可能性が高い。この成果は国際雑誌Bulletin of Volcanologyに投稿し掲載された。 有珠山の山体崩壊の年代学的な研究により、有珠山が非常に特異な火山であることが判明した。有珠山は1万6千年前の山体崩壊後、歴史時代の噴火まで1万5千年間も活動を休止した。このように1万年を超える長期的な活動休止期間をもつ火山は、日本には例がない。この研究成果は、北海道洞爺湖町で2019年10月26日に行われた火山防災講演会で発表し、有珠山周辺の一般住民に公表した。 有珠山における最近の噴火活動に関しては、有珠山山頂部に西暦1663年以降に形成されたオガリ山潜在ドームの研究を行い、ドームの形成史を解明した。この成果は国際雑誌Frontiers in Earth Scienceに投稿し掲載された。 洞爺カルデラ全体の火山噴火史については、洞爺火砕流堆積物の下位にある3つの火砕流堆積物(壮瞥火砕流堆積物,滝ノ上火砕流堆積物,長良川火砕流堆積物)の野外地質調査を行い、化学分析と鉱物分析を行った。その結果、長良川火砕流堆積物だけが非常に特異な化学組成を示すことが明らかになった。この研究成果はカナダモントリオールで開催されたIUGG国際学会で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有珠山の山体崩壊により形成された善光寺岩屑なだれ堆積物について詳細な層序学的地質調査を行い、テフラ層序と放射性炭素年代測定(14C法)により,山体崩壊年代が1万6千年前であったことを解明した。有珠山の山体崩壊年代はこれまで信頼できる年代データがなく、山体崩壊年代を解明することができたのは、有珠山の火山防災を進める上で大きな成果である。またその成果を国際雑誌Bulletin of Volcanologyに掲載することができた。有珠山の全噴火史を解明するために最も重要な山体崩壊年代を解明することができたことは、本研究課題を進める上で非常に大きな進歩である。 さらにこの成果を北海道洞爺湖町で2019年10月26日に行われた火山防災講演会で発表し、有珠山の周辺住民に公表することができた。 有珠山における歴史時代の噴火活動に関しては、1663年以降のオガリ山潜在ドームを中心に研究を行い、成果を国際雑誌Frontiers in Earth Scienceに掲載することができた。洞爺カルデラ全体の火山噴火史については、洞爺火砕流堆積物の下位にある3つ火砕流堆積物(壮瞥火砕流,滝ノ上火砕流,長良川火砕流)の野外調査を行い、その成果をカナダモントリオールで開催されたIUGG国際学会で口頭発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、有珠山の火山防災を進めることであるが、研究のターゲットは有珠山のみでなく、有珠山を含む洞爺カルデラ全域である。最終的な研究ゴールは、洞爺カルデラの全噴火史解明により有珠山を理解し、防災につなげることである。初年度に有珠山の山体崩壊年代の解明に成功したため、今後は洞爺カルデラ全域の噴火史解明を行う。特に洞爺カルデラ形成以前~洞爺カルデラ形成時期の火山活動について研究を進める予定である。 洞爺カルデラ形成以前の活動は、洞爺カルデラを形成した洞爺火砕流の下位にある3つの火砕流堆積物(壮瞥火砕流,滝ノ上火砕流,長良川火砕流)の調査・研究を行う。これらの火砕流堆積物について岩石学的な研究を推進し、洞爺カルデラの全ヒストリーを解明する。 初年度に行った地質調査の結果、洞爺カルデラ形成以前~形成中の活動時期とオーバーラップして、洞爺カルデラ北側の尻別岳から喜茂別火砕流堆積物が噴出していることが判明した。喜茂別火砕流堆積物に関する既存研究は少なく、洞爺カルデラ形成の火山活動史を解明するためには、喜茂別火砕流堆積物の解明も行う必要がある。このため研究計画をやや変更して、尻別岳起源の喜茂別火砕流も調査を行い、洞爺カルデラの火砕流堆積物との関係を明らかにして、洞爺カルデラの火山活動史を総合的に解明する予定である。 また初年度に行った有珠山の年代学的な研究により、有珠山が非常に特異な火山であることが判明した。有珠山は1万9千年前に活動を開始し、1万6千年前に山体崩壊し、その後、歴史時代の噴火まで1万5千年間も活動を休止した。このように1万年を超える長期的な活動休止期間をもつ火山は、日本には例がない。時間的な余裕があれば、有珠山と海外のデイサイト質火山(アメリカ・ラッセンピーク等)との比較研究を行い、有珠山の特異性の原因を解明したい。
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[Presentation] Evolutional history of Toya caldera, Hokkaido, Japan: since 1.6 Ma to the present.2019
Author(s)
Goto, Y., Danhara, T. and Tomiya, A.
Organizer
27th IUGG General Assembly (Montreal, Canada, 8-18, July, 2019)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Pre-eruptive magma dynamics of the climactic 110ka eruption of Toya caldera, Japan.2019
Author(s)
Tomiya, A., Goto, Y., Danhara, T., and de Silva, S.
Organizer
JpGU2019 (Makuhari, Chiba, 26-30, May, 2019)
Int'l Joint Research