2021 Fiscal Year Annual Research Report
巨大地震津波は北海道西部太平洋岸を繰り返し襲うか?
Project/Area Number |
19K03986
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高清水 康博 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (10446370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 裕一 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20208226)
卜部 厚志 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (20281173)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 北海道 / 津波堆積物 / 17世紀津波 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,過去2年間の成果を踏まえ,17世紀津波堆積物の性状解析を進めるとともに苫小牧市弁天流路川左岸の低地,およびむかわ町汐見の沿岸低地(両地域間の距離は約17.5 km)で実施した津波堆積物調査の結果から胆振東部太平洋岸における過去3000年の津波履歴について検討した. 苫小牧市弁天水路川左岸の沿岸低地の17世紀津波堆積物が分布する地域において実施した津波堆積物調査から,深度1m弱~約1.6m程度の層準で樽前c2テフラ(約2700年前)を認めた.このテフラは泥炭層に挟在していて,泥炭層自体は有珠bテフラ(CE1663年)直下から樽前c2テフラの約10cm下位まで連続して堆積していた.このことは約3000年前以降,安定して沿岸低地の湿地・湿原環境が保たれていたことを示しており,それ以前の津波痕跡をよく保存することができる場であると考えられる.しかし,この泥炭層中における津波痕跡は,今回の調査では17世紀津波堆積物以外には認められなかった. むかわ町の鵡川左岸の沿岸低地の17世紀津波堆積物が分布する地域において実施した津波堆積物調査から,深度約1m弱の層準で樽前c2テフラ(約2700年前)を認めた.苫小牧地域と同様に約3000年前以降,この場所では安定して沿岸低地の湿地・湿原環境が保たれていた.また泥炭層中における津波痕跡の確認を行ったが,むかわ地域においても17世紀津波堆積物以外には認められなかった. 両地域の17世紀津波堆積物が分布する場所において過去3000年間の津波履歴の検討を行ったがいずれからも津波痕跡を認めることはできなかった.よって少なくとも過去3000年間においては,北海道東部太平洋岸に見られるような,そして両地域の沿岸低地に明瞭なイベント堆積物を形成するような数百年間隔の巨大津波イベントの発生はなかったと考えてよいだろう.
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Research Products
(3 results)