2021 Fiscal Year Research-status Report
Rock magnetic studies in evaluating thermal history of hot springs in active volcanic areas: Case studies from Mn wad deposits in Hokkaido, Japan
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19K03989
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
川崎 一雄 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (60624806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 英男 富山大学, 理学部, 客員教授 (30134993)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 古地磁気 / 岩石磁気 / 温泉水 / 火山活動 / マンガン / 鉱床 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,活火山地域の温泉水から微生物作用により恒常的に沈殿する二酸化マンガンを主な対象に,古地磁気・岩石磁気学の手法から,堆積環境や堆積年代を推定し,火山静穏期を含む火山活動の推定を試みる.当該年度は,初年度,前年度及び当該年度に北海道駒ケ岳の麓にある旧駒の湯温泉から採取したマンガン沈殿試料及び表層コア試料を研究に用いた.また,既存のマンガン鉱石及びカナダGrum鉱床試料を研究に用いた.北海道旭岳温泉周辺の野外調査を実施した. 旧駒の湯温泉から採取した7本の表層コア試料のうち4本について,室温・高温・極低温の岩石磁気分析を行った結果,池底面からの深さやコアの採取位置によらず主要な磁性鉱物が同一であることから,マンガン土が沈殿を開始して以降,温泉水の経路や火山の状態に顕著な変化がないことが示唆される.また,池底面からの深度による低保磁力鉱物の相対量や超常磁性粒子の変化から,初期続成作用の影響を示唆する.同様に深度によるマンガン鉱物の結晶度の変化も指摘でき,現在沈殿中のマンガン土内にバーネス鉱の存在が分かった. カナダGrum鉱床の古地磁気・岩石磁気解析の結果,鉱床部で主にピロタイトが担う安定な残留磁化成分が認められ,約176 Maの古地磁気年代を得た.Grum鉱床の成因として,近傍の白亜紀Anvil深成岩体の貫入が指摘されていたが,鉱床の形成に関与しておらず,ジュラ紀の構造運動に伴い鉱床が形成されたことを明らかにできた.同じSelwyn堆積盆中のHowards Pass鉱床の既報の古地磁気年代と本研究で得られた結果を対比し,Selwyn堆積盆全域がジュラ紀に鉱床形成に関連する熱水流体の貫入があったと指摘できた. 北海道の旭岳温泉周辺で野外調査を実施し,マンガン土堆積物及びマンガン被覆岩石の分布範囲を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,複数の地点の結果の対比を予定しているが,コロナウィルス感染症拡大により予定していた野外調査・試料採取ができていないことが原因である.北海道旧駒の湯温泉で採取した浅部コア試料の岩石磁気分析より,初期続成作用の影響を明らかにし,また磁性鉱物に顕著な変化が認められないため当該地域でマンガン土の沈殿が始まって以降,火山活動が安定していたことを示唆する結果を得た.また,カナダGrum鉱床では,深成岩体の貫入の影響が示唆されていたが,鉱床部の古地磁気・岩石磁気分析より,深成岩体の貫入以前に鉱床が形成していたことを明らかにした.鉱床と火山の関連性やマンガン土の磁気特性に関する情報は得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度より旧駒の湯温泉に設置しているマンガン沈殿機器を回収し,マンガン沈殿試料の岩石磁気分析を行い,結晶成長に伴う磁気特性の変化を検証する.また,前年度に採取した浅部コア試料について磁気分析の対象を広げ,池全体でのマンガンの沈殿と初期続成作用の影響を磁気特性から検討する.さらに,当該年度に分布を確認した旭岳温泉周辺で同様なマンガン土を対象とした試料採取・磁気分析を実施し,旧駒の湯温泉で得られた結果と対比・検討を行うことで,マンガン土の磁気的な特徴を把握し,温泉水の活動期間と環境変化の解明を目指す.これまでに得た成果の議論を深め,学会発表をはじめ国際誌への投稿など,成果発表を積極的に行っていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響により,県外での調査自粛やオンラインによる学会発表対応となり,予定していた旅費が少なくなった.当該年度に計上していた予算は繰り越して,次年度に改めて調査を実施する予定である.
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Research Products
(1 results)