2019 Fiscal Year Research-status Report
噴火推移の高頻度赤外解析:長時間・短時間スケールの変動と前兆現象
Project/Area Number |
19K04011
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 隆之 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90221887)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70222354)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ひまわり8号 / リモートセンシング / 火山 / 溶岩流 / 西之島 / 噴出率 / 噴火推移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ひまわり8号の熱異常の時間変化と高分解能画像の組合せによって,西之島2017年噴火の推移の検討を行った. 1.6 umの熱異常の時間変化は,基本的に溶岩噴出率の時間変化を反映していると考えられ,この変化パターンに着目して,噴火推移の区分を行った.ステージ1:溶岩の噴出率が最も高く,溶岩流は西と南西へ同時に流れた.ステージ2:噴出率がほぼ一様に低下すると共に,溶岩流は南西方向へのみ流下する様になり,南西溶岩デルタが成長した.ステージ3:6月上旬,一時的に噴出率が上がると,溶岩の大半は西側へ向かい,同時に,火砕丘南斜面から新たに溶岩流が噴出した.ステージ4:溶岩の噴出率がさらに低下すると,溶岩は内部通路を通って西側に向かって流れ,西溶岩デルタが成長した. 7月末頃溶岩の噴出は停止した.ステージ5:小規模な爆発的噴火が散発的に発生した. ALOS-2画像を基に,陸上と海面下の噴出物を合せた総噴出量は1.6×10^7 m^3,平均の噴出率は,1.6 x 10^5 m^3/dayと見積もられた.また,噴出率の時間変化は,ひまわりの1.6umの熱異常の時間変化パターンと概ね一致した.ただし,ALOS-2の観測間隔は14日毎,ひまわりは10分毎であるため,後者の方が,噴出率の時間変化をより正確に示していると考えられる. 噴出率がパルス的に高くなったステージ1や3では溶岩は複数の方向へ流れ,それらに続く低下時期であるステージ2や4は一方向に流れるといった傾向が見られた.これは,噴出率が上がると,火口での溶岩の頭位が上り複数の方向に流れやすくなることに加え,火道の内圧の高まりにより,火口近傍の構造の変化や,新たな噴出口が発生するためと考えられた.短時間スケールの熱異常の時間変化を見ると,熱異常のレベルはほぼ一定であり,溶岩の噴出はきわめてコンスタントであったことが推定された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に行った西之島2017年活動の研究において,ひまわり8号1.6umの熱異常の時間変化により溶岩流の噴出率の時間変化を,従来にない高い時間分解能で捉えることができることを確認した.これにより噴火推移の観測を微細な噴出率の時間変化という新しい視点から捉え,検討を行うといった研究の実施可能性とその有効性を確かめることができた.今後,当初から目標にしていた「長時間スケールの変動:噴火推移の多様性の把握と類型化」,「噴火開始・活動様式変化の前兆現象の抽出と検討」,「噴火プロセスを反映した短時間スケールの熱異常変化に関する研究」を,さらに進める見通しが立った.今のところ,研究上の障害,問題は発生しておらず,当初の計画通り研究を進められる予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年の研究によりひまわり8号のデータを使った基本的な解析について目途をつけることができた.次の課題として, GCOM-C(しきさい)衛星に搭載されているSecond Generation Global Imager (SGLI)画像の火山解析における効果的利用法・可能性を探るために,タイプの異なる噴火事例を複数選んで解析し,その結果の検討を行う.GCOM-Cの特質すべき点として,観測頻度を2-3日と比較的高く保ちながら,赤外域の1.63um,10.8 um,12.0 umバンドの分解能が250mと高いことがある. 規模の大きい溶岩流の噴出活動として,ハワイ,キラウエア2018年噴火を取り上げる.溶岩流の分布スケールに比べSGLIの250mの画素サイズは十分細かく,溶岩流の流下域の時間変化を詳しく捉えることができる可能性がある.溶岩ドームと火砕流の発生活動として,カムチャッカ半島のシベルチ火山2018-19年活動の解析を行う.SGLIの1.63umバンドにより溶岩ドームの活動状況を,10.8 umバンドにより火砕流の発生状況を捉えることにより,溶岩ドームの成長と火砕流発生の関係を検討することができると期待される.活動的な火山湖の活動として,インドネシアのイジェン湖の湖水温度の変化の観測を試みる.イジェン湖は直径が900mと比較的大きく, 250mという高い分解能をもつSGLIであれば,湖水温変化を細かくモニタリングできる可能性がある.規模なブルカノ噴火の断続的発生活動として,桜島の観測を行う.SGLIは画素サイズが小さいため,1.63umのバンドにより小規模なブルカノ噴火の発生状況を検出・解析できる可能性がある.
|
Causes of Carryover |
2019年度において, SGLI画像の処理システムを用いて,噴火推移の検討に向けた解析ツールの開発に着手する予定であった.しかし,現有システムの補正レベルでは幾何補正の精度が十分でないことが判明した.この原因の検討に時間を要したため,予定されていた解析を行うことができなかった.現在この原因が地形に基づくものであることがほぼ特定できている.2020年度において,この補正のためのプログラム開発,滞っていた噴火推移の解析ツールの開発を進める.2020年度に,これらのプログラムを稼働させるためのサーバシステムの改修・拡張を行う予定であり,前年度と今年度の予算を用いてこれに必要なパーツ類を購入する.
|
Research Products
(4 results)