2020 Fiscal Year Research-status Report
噴火推移の高頻度赤外解析:長時間・短時間スケールの変動と前兆現象
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19K04011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 隆之 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90221887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70222354)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | しきさい / GCOM-C / SGLI / リモートセンシング / 火山 / 溶岩流 / 火口湖 / ブルカノ噴火 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はGCOM-C「しきさい」SGLI画像の火山解析における効果的利用法および可能性を探るために,2018-2019年にアジア太平洋域で起きた代表的な噴火から,タイプの異なる4つの噴火事例を選び,その解析を行った.規模の大きい溶岩流の活動として,2018年キラウエア噴火を取り上げた.溶岩流の分布スケールに比べSGLIの250mの画素サイズは十分細かく,10.8-umバンド画像を累積熱異常分布図を用いて解析することにより,イーストリフトゾーン下部で噴火が始まり,溶岩流の流下域が西側から東側へ移って行った過程を詳しく捉えることができた.溶岩ドームと火砕流の発生活動として,2018-19年シベルチ火山活動の解析を行った.SGLI 1.63-umバンド画像により溶岩ドームの活動状況を,10.8-umバンド画像により火砕流の発生状況を捉えることができ,溶岩ドームが急成長したと思われる時期に火砕流が発生してたことを明らかにすることができた.活動的な火山湖の活動として,インドネシアのイジェン湖(直径900m)の2019年1月ー12月の湖水温度をSGLI 10.8-umバンド画像を使って観測した.この結果,5月半ばから6月にかけて水温が急上昇し,6月21日には38℃(最高温度)に達したことが判った.小規模なブルカノ噴火の断続的発生活動として,桜島の2019年1月-12月活動の観測を行い,SGLI 1.63-umバンド画像は小規模なブルカノ噴火の発生時期に対応して,熱異常を示すことがわかった.1.63-umバンドは高温で微小な熱源の観測に有利で,ブルカノ噴火の発生原因となる火口底へのマグマのごく小規模な噴出を敏感に捉えることが可能であるためと考えられた.GCOM-C「しきさい」SGLI画像は,多様な側面をもつ火山活動の観測に有効であることを確かめることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度にGCOM-C「しきさい」SGLI画像を用いて,代表的な噴火事例の解析を行い,多様な側面をもつ火山活動の観測にきわめて有効であることを確認することができた. 現在,GCOM-C「しきさい」SGLI画像を用いたアジア太平洋域のリアルタイム火山観測システムが完成し,主要167活火山の観測を行っている.ここで検出される噴火についても,2020年に行った検討結果を基に,どのような噴火についてどのような解析を行えば良いか,ある程度の指針を得ることができた. とくに研究上の障害,問題は発生しておらず,当初の計画通り研究を進められる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年の研究によりGCOM-C(しきさい)衛星に搭載されているSecond Generation Global Imager(SGLI)画像の火山解析における効果的利用法について詳しい検討を行うことができた.次の課題として,ひまわり8号の画像を利用して,溶岩流等の噴出的噴火における噴出率の推定を行う方法について検討を行う.噴出的噴火において,噴出率はマグマの地下での移動プロセスや,活動様式と密接な関係があり,最も重要な噴火パラメータの一つと考えられている.また,噴出率は溶岩流の流下にも大きな影響を与えるため,防災上の観点からも,これを連続的かつ迅速に捉える手法の確立は危急の課題となっている.従来の研究によって,衛星の1.6-um画像の熱異常は,噴出的噴火における噴出率変化をよく反映していることが指摘されている.我々のこれまでの研究において,2017年西之島と2015年ラウン火山の噴出的噴火において,夜間ひまわり8号1.6-umバンドの輝度値と地形的方法を用いて推定した噴出率が高い正の相関をもつことが認められている.このことは,両者の間の相関を吟味し,回帰式を求めることにより,衛星による熱異常観測から噴出率を推定できることを意味する.このような観点から検討を進める.
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Causes of Carryover |
2020年度において, SGLI画像の処理システムおいて,データアーカイブシステム開発に着手する予定であった.しかし,サーバの不調により予定されていた作業を行うことができなかった.2021年度において,アーカイブ用サーバシステムのハードディスクの交換と増設を行い,滞っていたアーカイブ作業を進める.前年度と今年度の予算を用いて,この作業に必要なハードディスク等の機材購入を行う.
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] A new infrared volcano monitoring using GCOM-C (SHIKISAI) satellite: applications to the Asia-Pacifc region2020
Author(s)
Kaneko, T., Yasuda, A., Takasaki, K., Nakano, S., Fujii, T., Honda, Y., Kajiwara, K. and Murakami, H.
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Journal Title
Earth Planets Space
Volume: 72
Pages: 115/1-16
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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