2021 Fiscal Year Research-status Report
苦鉄質マグマの火道上昇に伴う物性変化とその噴火ダイナミクスへの影響の解明
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19K04014
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
石橋 秀巳 静岡大学, 理学部, 准教授 (70456854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 聡 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40532213)
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70222354)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 苦鉄質マグマ / 噴火様式 / マイクロライト / 脱ガス / 結晶作用 / レオロジー / 火道浅部 / 石基 |
Outline of Annual Research Achievements |
苦鉄質マグマの噴火様式に及ぼす火道浅部プロセスの影響について明らかにするため,伊豆大島1986年B噴火と富士山S18噴火の2つの苦鉄質準プリニー式噴火のスコリアについて石基組織解析を行った。これらのスコリアはいずれも,同一層準内で石基結晶量の幅広い連続的変動を示し,その範囲はマグマの粘性-脆性遷移がおこると考えられる臨界結晶量φcの実験値をまたいだ(ただし,φcの値は結晶の形状や方位分布,発泡度などに依存して変化するので,今後,天然試料からその値を制約する必要がある)。また,スコリアのうち,石基結晶に富むものでは気泡の形状が歪ある,マイクロライトの方位分布はランダムであるなど,結晶作用から破砕までの間に流動した痕跡がみられなかったのに対し,結晶量の少ないスコリアでは気泡の形状が丸く緩和されており,一部に結晶の平行配列がみられるなど,破砕後にも流動変形を継続していた痕跡が見られた。これらは,苦鉄質マグマの準プリニー式噴火において,液体的にふるまうマグマと固体的なマグマが同時に噴出していたことを示唆している。このことは,伊豆大島1986年B噴火と富士山S18噴火の両噴火でともに,広域に火砕物を飛散しながら,同時に火口近傍に堆積した火砕物が溶結・二次流動したことからも整合的である。それでは,スコリアの結晶量の違いはどのように生じたのか?富士山S18噴火では,結晶量<φcの場合,石基結晶の量の増加とともに数密度も増加するが,結晶量>φcでは結晶量によらず数密度が一定である。このことから,高結晶量のスコリアは,火道浅部で停滞・冷却していたマグマ由来と考えられる。一方で伊豆大島1986年B噴火のスコリアの石基鉱物は,結晶量と数密度に正の相関がみられることから,火道上昇時の一連の減圧結晶作用で形成した可能性がある。この結晶化過程の詳細については今後,検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗に遅延が生じた原因として,2020年度に引き続き,2021年度も新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響が大きい。コロナ感染症のために11月頃まで県境をまたぐ移動が制限され,当初計画していた東大地震研究所でのEPMAによる局所化学分析のための出張や,県外での野外調査が妨げられた。このため,前年度に引き続き,出張せずとも実施可能である画像解析によるスコリアの石基組織解析を優先的に進めることになり,この方面では予定通り進捗したものの,一方で出張しないとできない化学分析の進行がやや遅れ気味になってしまった。また,コロナ感染症対策のために,学内での授業タスクが実質的に著しく増加し,結果として研究にかけられる時間が圧迫された。 また,遅延が生じたもうひとつの原因として,研究試料であるスコリアの性質に由来する問題があげられる。まず,高結晶量スコリアでは,石基鉱物が細粒かつ高数密度のために,粒間ガラスの分析が困難であることがわかった。また,スコリア石基中の単斜輝石では,10ミクロン径程度の一粒子の中でも,普通輝石の部分とピジョン輝石の部分が混在していることが明らかとなった。このため,当初に予定していた石基のガラス・輝石の化学分析がうまく行えなかった。ただし,これは新しい技術開発の契機ととらえることもでき,特にガラスについては問題を解決できる技術的方法を現在模索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,高結晶量スコリアの粒間ガラスの化学組成を分析する方法を開発する。また,天然の苦鉄質マグマで粘性-脆性遷移がおこる臨界結晶量を制約するため,石基結晶に富む部分と乏しい部分の両方を含む複合スコリアについて組織解析を進める。更に,伊豆大島1986年B噴火スコリアについては,その火道浅部結晶作用のプロセスとその噴火ダイナミクスへの影響について論文にまとめ,査読付き国際専門誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため,11月頃まで県境をまたぐ移動ができず,当初予定していた分析のための出張や野外調査が十分できなかった。また,コロナ感染症の影響で研究の進捗がやや遅延したため,本課題の成果を論文として公表するのに必要な経費(論文掲載料や英文校閲費等)を次年度に繰り越す必要が生じた。次年度に繰り越した予算は,主に分析・野外調査のための出張費と論文出版費として使用することを予定している。
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[Journal Article] Reply to: Hiroaki Sato, Shigeru Suto, Tadahide Ui, Toshitsugu Fujii, Takahiro Yamamoto, Shinji Takarada, Keiichi Sakaguchi, “Flowage of the 1991 Unzen lava; discussion to Goto et al. ‘Rigid migration of Unzen lava rather than flow’, J. Volcanol. Geotherm. Res, 110, 107073.”2021
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