2023 Fiscal Year Annual Research Report
地震波解析による水蒸気噴火発生場の解明:御嶽山・草津白根山におけるケーススタディ
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19K04016
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前田 裕太 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (00728206)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水蒸気噴火 / 地下構造 / 御嶽山 / 熱水系 / 数値シミュレーション / 地震波解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
水蒸気噴火は火山浅部の地下水に熱が加わることで急激に気化する現象と考えられている。しかし熱がどのような媒体によっていかなる機構で運搬・蓄積されるのかは明白ではない。本研究では具体的な熱供給過程の解明を目指し、近年水蒸気噴火を起こした御嶽山において地震学的手法により熱輸送モデルの制約条件を得ること、その結果を用いて地下水加熱シミュレーションを行うこと、比較のため草津白根山においても解析を行うことを計画した。 地震学的手法による解析は御嶽山、草津白根山ともに前年度までで概ね完了した。最終年度にはまず御嶽山で得られた地下構造モデルを精査し、論文化した(Maeda and Watanabe, 2023)。この中で海抜下300 mにマグマだまり上面、標高900-1900 mに流体移動に対してバリアとなる低浸透率層、それを貫く幅400 mの流路を推定した。 最終年度には更にこの成果を用いて有限要素法ソフトウェアによる地下水加熱のシミュレーションを行った(Maeda, 2024)。マグマだまり上面から上部の地下水層に高温流体を注入後の温度・圧力の時空間発展を計算したところ、全域の圧力が瞬時に増大することで火山構造性地震の活動が誘発される一方、温度の上昇が遅れて起きることで注入流体が比較的低温の場合には低周波地震・微動等の前兆現象が抑制され、地下水の気化が1度にまとめて起きることで大規模な水蒸気噴火になることが示唆された。この経過は2014年噴火前の推移に類似する。注入流体を高温にすると超臨界状態が生じることで前兆現象の種類が豊富になり、2007年噴火前の経過に類似する。浸透率や注入率等のパラメータを調整することで前兆期間や地表での地殻変動の大きさ等を説明できるモデルが得られた。
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