2021 Fiscal Year Annual Research Report
Tsunami generation: strain accumulation in crust and diversity of earthquake rupture process
Project/Area Number |
19K04021
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
齊藤 竜彦 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波防災研究部門, 主任研究員 (30550933)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歪みエネルギー / 断層破壊 / 津波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は,海底下の地殻への歪み蓄積―断層破壊―津波発生の各物理過程を統合した定量モデリングによって,大津波がどこで,どのように発生するか予測することを目的としている.研究期間全体で,歪みエネルギーの蓄積,その解放による断層破壊,津波発生過程に関する基礎研究を行い,最終年度においては,南海トラフを対象とし,地震性すべり(高速すべり)に加え,ゆっくりすべりを考慮した巨大地震の連鎖的破壊シナリオを作成した. 巨大地震を引き起こす歪みエネルギーの蓄積過程では,プレート間の固着が重要な役割を果たす.プレート間の応力増加速度を衛星測位データ解析から推定するインバージョン手法を開発し,南海トラフにおける歪みエネルギーの定量化を実施した.そして,地震破壊に伴うエネルギー収支を理論的に調査し,規模の大きい地震ほど,また,破壊過程が複雑な地震ほど,地震を引き起こすために必要となる歪みエネルギーが必要となることを明らかにした.推定したプレート間応力分布とエネルギー収支の理論的考察をもとに,南海トラフで起こりうる巨大地震の連動破壊シナリオ,および,連動破壊が起こるために最低限必要となる歪みエネルギー量を見積もった.さらに,固体地殻-流体海水系における津波発生プロセスを定式化し,地震動と津波の連成シミュレーションを実行することで,実在する観測設備で観測可能な物理量である海底水圧変化を予測し,巨大地震時の模擬観測記録を作成した. 本研究計画の実施によって,断層力学と観測データに基づいて将来起こりうる巨大地震を想定する方法を提案した.今後は,巨大地震の間に起こる可能性のあるゆっくりすべりが,どこで,どの程度の規模で起こりうるかを,理論とデータをもとに想定するための研究開発が重要となる.
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