2019 Fiscal Year Research-status Report
傾斜変動連続観測ビッグデータを用いた高分解能な地殻活動モデル推定手法の開発
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19K04023
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
木村 武志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 主任研究員 (10563520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 傾斜変動データ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本全国におよそ20km間隔で約750の観測点が展開されている傾斜変動連続観測網による15年以上の長期に渡る観測データを使って、プレート境界におけるスロースリップ等の様々な地下の地殻活動を網羅的かつ効果的に検出する手法の開発に着手した。これは、同じく全国規模で地表の変位を計測するGNSSデータと比べて、時間・空間分解能に優れているにも関わらず必ずしも全データが有効に活用されていない傾斜変動データを利用することにより、日本国内で発生する多種多様な地殻活動の網羅的な検出および高解像度でのモデル推定を目指すものである。 本年度は、長期間の地殻変動観測データから網羅的に地殻活動を検出する際に必要となる、各観測点における傾斜変動データの背景ノイズの時間変化を調査した。一般的に、傾斜変動を含む地殻変動データには、周期帯によらないホワイトノイズと長周期帯域で卓越するランダムウォークノイズの2つの成分が含まれることが知られている。本研究で対象とした1時間サンプリングの傾斜変動データでは、その多くでランダムウォークノイズが卓越しており、その強度には観測点によってばらつきが見られた。また観測点によっては、観測機器の状態等によりその強度が時間変化していることが分かった。これらの結果は、今後の地殻活動の自動検出手法開発において考慮する必要がある。また、開発した検出手法の検知能力を把握する際にも、対象とする地殻活動の継続時間や発生時期を考慮する必要があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
傾斜変動データのノイズ特性の把握に着手したが、当初予想していたよりもこの特性が空間および時間的に複雑であった。長期間のデータセットを扱って地殻活動の自動検出手法を開発する際には、この結果を十分に考慮する必要があるため、丁寧に調査を行った。これにより、自動検出手法をプレート境界のスロースリップ以外の地殻活動に拡張する手法開発が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に調査した、長期かつ大量の傾斜変動データのノイズ特性を踏まえて、既存のスロースリップの検出手法について他の地殻活動への拡張に着手する。また、本年度調査したノイズ特性については、手法開発後の地殻活動の検知能力調査等にも活用する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、プレート境界のスロースリップ以外の地殻活動に対する自動検出手法の拡張にまで至らなかったために、解析用のソフトウェアの購入や学会発表等を実施しなかった。この分は,令和2年度以降での解析用ソフトウェアの購入等に用いる予定である。
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