2019 Fiscal Year Research-status Report
岩石学的・地球化学的手法に基づく北海道中軸部~東部の造構史再構築
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19K04025
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 徹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (00396285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七山 太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (20357685)
下田 玄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (60415693)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イザナギ-太平洋海嶺 / アダカイト / 日高火成活動帯 / 日高帯 / 常呂帯 / 日高累層群 / 中の川層群 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1事業年度である2019年度は,本研究の柱となる3つのサブテーマのうち (I) 日高火成活動帯における3つの年代パルスに対応するマグマ・システムの解明について,既存の緑色岩試料の分析・解析により,最初のパルス(46 Ma)がイザナギ-太平洋海嶺の沈み込みに起因することを解明し学会発表を行い,論文として報告した.さらに,成因の不明であった2つめのパルス(37 Ma)について,アダカイトを伴うこと,深成岩類の化学組成が1つ目のパルスと全く区別できないことから,やはりイザナギ-太平洋海嶺の沈み込みに関連した火成活動であるとする仮説を構築し,学会で発表・論文投稿の予定である.サブテーマ (II) 東北海道を形成する火成岩類の検討においては,東北海道の常呂帯由来の日高帯中のブロックから,159 MaのジルコンU-Pb年代を示すトーナル岩を見いだし,学会発表を行った.サブテーマ (III) については,日高帯の堆積岩類のジルコンU-Pb年代データを拡充するとともに,これまで日高累層群とされてきたものの中に,全く若い異質な地質体が存在することを明らかにした.これらについて,学会で発表するとともに論文として報告した.これらの研究を実施するにあたり,研究代表者の山崎は野外調査を実施して産状の観察・試料の採取を行うとともに,それらの試料の分析・解析・成果の取りまとめと発表を行った.また,研究分担者の七山は堆積岩類のジルコンU-Pb年代の解析及び成果取りまとめと発表,下田はSr・Nd・Pb同位体比の分析・解析を行った.さらに,(I) の研究課題の検討においては,研究協力者の前田仁一郎博士より粉末岩石試料の提供を受けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の問いの核心は,2000年代以降,日高変成帯を含む日高火成活動帯を構成する深成岩類・変成岩類から約46, 37, 19 Maの3の年代パルスが報告された結果,1990年代までの日高火成活動帯・日高変成帯の形成モデルが成立しなくなったものの,それに変わる包括的なモデルが構築されていない点であった.これを解決するため,(I) 3つの年代パルスの火成作用の成因を検討することと,(II) 火成活動とは独立した堆積作用の時期・モデルを検討すること,さらに (III) 日高帯に隣接していたと想定される,古千島弧-海溝系で形成された東北海道(常呂帯)の実体を明らかにすることにより,本課題では新たな造構モデルの構築を目指している.このうち,(I) の約46 Maと37 Maの年代パルスについては,イザナギ-太平洋海嶺の沈み込みで説明可能であることをすでに突き止めて新たなモデルを学会で報告するとともに,一部は論文としてすでに掲載された.さらに,(II) については,数多くの新知見を学会で発表するとともに,すでに2編の論文が公表されている.加えて,(III)の東北海道常呂帯由来岩石から,159 MaのジルコンU-Pb年代を得た事により,イザナギプレート上での火成活動が,同様の年代を示す空知-エゾ帯や御荷鉾緑色岩類と対比できる可能性がでてきた.このことから,御荷鉾緑色岩類に関する検討を共同研究として直ちに開始し,すでに1編の論文を報告した.その結果,直接本研究課題に関連するものだけでも3編の公表論文が,御荷鉾緑色岩や,本研究地域構成岩類と類似する花崗岩類・超苦鉄質キュムレイトを扱ったものを加えると7編の論文がすでに掲載され,検討内容の進展としても,成果の数としても,当初の目標を上回るペースで成果が挙がっているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の問いの核心を解決するための,(I) 3つの年代パルスの火成作用の成因の検討については,核心的な問いの一つである約37 Maの火成活動の成因を解明するモデルを構築したため,論文として速やかに報告する.さらに,46・37 Maの火成活動の成因が海嶺沈み込みに特定されたことによって,19 Maの火成活動の産物との地球化学的な識別が明確となった.今後は,19 Maの火成活動の産物が示す地球化学的特徴を明確化するとともに,その成因を説明する造構モデルを,化学的な根拠によって明らかにしていく.(II) 火成活動とは独立した堆積作用の時期・モデルについては,ジルコンのU-Pb年代の拡充によって全体像がほぼ見えてきた.東北海道を含めた追加的なデータ拡充により,総括的なモデルの構築を目指す.(III)については,ここ数年で1980年代以降の新たなデータが多量に得られつつある.さらなる調査・試料採取と,採取試料の全岩化学組成分析,これまで全く報告のないPb同位体比の分析,さらにジルコンU-Pb年代値の拡充を進め,全体像を明らかにしていく. 以上の検討・作業を実施するため,第2事業年度も,野外調査及び試料採取,同位体比・年代測定を含む各種分析を実施し,成果の得られたものから速やかに国内外の学会や公表論文として発表を行なっていく.
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Causes of Carryover |
研究成果の一部は,2020年3月にインド・デリーにて開催が予定されていた,第36回万国地質会議(36th International Geological Congress)において発表を行なう予定であった.しかし,新型コロナウィルス感染症の世界的な感染拡大を受け,同学会は2020年11月9日~14日に延期となった.参加・発表登録及び発表講演要旨は登録状態で延期となっているため,これらの経費については次年度(2020年度)に当初予定通りの目的で使用する予定である.このため,翌年度経費については,当初計画通りに使用する予定である.
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