2019 Fiscal Year Research-status Report
Reverse time reflection imaging of crustal structure using earthquakes
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19K04028
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
白石 和也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), 技術研究員 (40756491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 俊樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50210935)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自然地震 / 地殻内不均質構造 / 反射波 / 地下構造の描像 / 数値シミュレーション / 音響波 / 弾性波 |
Outline of Annual Research Achievements |
地下の不均質な構造を調べる有効な手段の一つは、地中を伝わる地震波を利用することである。日常的に発生する地震を観測するネットワークの発達した日本では、それを活用した地下構造の理解と常時観察のための研究開発は、国土防災に資する重要な課題である。本研究では、陸上または海底に設置した地震観測網で蓄積される自然地震の記録に含まれる反射波から、地下深部の構造を描像するための研究開発を行う。2019年度は、そのために必要となるデータ解析手法の開発と、その有効性を検証するための数値シミュレーションを実施した。 人工的な振動源を用いる一般的な地下調査法と異なり、自然の地震動を受動的に観測した記録を解析するには、正確な震源情報を知ることのできない場合にも適用できる必要がある。また、地震観測点は、空間的に不均一でまばらなことが多い。そこでまず、観測点の情報だけを使って解析できる方法を考案し、理論的な検討と解析プログラムの開発を行った。このとき、地震波に含まれるP波(縦波)とS波(横波)のうち、一方だけを解析する音響波タイプと、両方を同時に解析する弾性波タイプの2種類の方法を開発した。 次に、数値シミュレーションにより、解析手法の妥当性を検証するとともに、受振点分布の違いによる影響について考察した。既存の西南日本の地殻・プレート構造モデルを基に、陸域から海域に跨る調査測線を設定、実際の震源分布を模した地震観測記録を合成し、提案手法による解析を行った。このとき、均一に高密度な観測点が分布する理想的な観測条件と、実際の地震観測網に近い観測条件との解析結果を比較した。その結果、実際の震源分布から地下深部の構造を描像できる可能性、2種類の提案手法の特徴と有効性、観測点密度の低下に伴うイメージ劣化の影響など確認し、実用化の可能性と課題を整理できた。2020年度以降は、実際の自然地震観測データの解析を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受動的な自然地震観測記録を用いた地殻内不均質構造の描像について、解析手法の定式化と解析プログラムの開発、数値シミュレーションによる実証を行い、当初計画に対しておおむね順調に進展している。 まず、観測点の情報と自然地震観測記録のみから、記録に含まれる反射波による地下構造描画を行うリバースタイム法について検討を行い、解析プログラムの開発を行った。地中の波動場を再現するために解析に組み込むモデリング手法について、音響波動場と弾性波動場のそれぞれを仮定する2種類の方法を開発し、人工震源による地震探査で一般的なP波のみの解析に対して、地震波に元来含まれるP波とS波の両方のモードを同時または個別に解析することが可能になった。 次に、数値シミュレーションでは、既存の広域地殻・プレート構造モデルを活用して、開発手法を実証するための比較実験を行った。当初は海域と陸域を分けて検証を行う計画としていたが、プレート沈み込み帯全域を捉える実際の地震観測網を想定し、両者を分けずに数値シミュレーションを行った。これにより、効率的かつ統一的な実証実験を実現した。西南日本を対象とする陸域から海域に跨る調査測線を設定して、実際の震源分布を模した地震観測記録を合成し、均一に高密度な観測点が分布する理想的な観測条件と、実際の地震観測網に近い観測条件との比較実験を行った。その結果、実際の震源分布から地下深部の構造を描像できる可能性、観測点密度の低下に伴うイメージ劣化などの影響を確認した。実用化に向けて手法の有効性を示したと同時に、観測および解析における課題を整理したことで、今後に実施予定の実際の自然地震観測データの解析に向けて有意義な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は、実データを用いた提案手法の実証を目的として、実際の地震観測データの解析を行う。2019年度に実施した数値シミュレーションで明らかとなった、受振点密度と描像し得る地下構造の関係を踏まえて、まず、比較的観測密度の高い陸上の観測データを対象とし、既存の観測によるデータを収集し、地殻内部やプレート沈み込み等の地下深部構造を対象とした解析を行う。一方、当初の解析対象と想定していた、現在稼働中の海域から陸域にかけての常時地震観測網では、現状の解析手法による地下構造の描画には、観測点密度が不十分な可能性がある。そこで、解析の前処理や中間過程における工夫を取り入れたいと考えており、陸域と海域のそれぞれの特性を踏まえた有効なデータ処理手法について研究開発を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2019年度は解析手法の開発と数値シミュレーションを中心に研究を行ったので、物品費と人件費・謝金をはじめ、全般的に予定よりも少額で済んだためである。2020年度以降は、実データの解析に伴い大容量データを計算・記憶するための環境の整備にかかる物品費、国内外での成果公表や関連研究の事例や動向を調査するための旅費、リサーチアシスタントへの謝金、学会参加や論文投稿にかかるその他費用について、研究費を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)