2020 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of stress accumulation under Hokkaido, Japan, using 3D finite element modeling and analysis of geodetic data
Project/Area Number |
19K04033
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋間 昭徳 東京大学, 地震研究所, 特任助教 (90600461)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 千島海溝 / 有限要素モデル / クーロン破壊関数 / 震源断層 / すべり速度欠損 / インバージョン / 北海道 / 2021年福島沖地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度作成した有限要素モデルと、千島海溝の固着のインバージョン結果にもとづき、北海道下の応力計算を行なった。また、2021年に発生した福島沖地震について、本研究の有限要素モデルを用いて2011年東北沖地震による影響を見積もった。2つの研究内容の詳細は以下の通りである。 (1)昨年度、北海道-東北地方北部のGPS観測網による地殻変動データから千島海溝のすべり速度欠損(固着)分布をインバージョンによって求めた。一方、日本海溝における2011年東北沖地震のすべり分布は、Hashima et al. (2016, EPS)によって求められている。また、東北沖地震以前の固着分布については、東北沖地震によってそれ以前の固着を解放したとの仮定のもとに設定した。これらのすべり速度欠損分布を有限要素モデルに入力して、北海道域の応力蓄積速度場と北海道~東北地方の震源断層上におけるクーロン破壊関数(ΔCFF)を求めた。結果、2011年以前については、ほぼ全域の震源断層で地震破壊に対し促進的であることを示す。一方、2011年以降については、北海道周辺では正のΔCFFを得る一方、東北地方では負のΔCFFとなった。その後、時間とともに、東北地方北部の震源断層でΔCFFが正に転じていくという傾向が見えた。 (2)本研究の有限要素モデルを用い、2011年東北沖地震による福島沖地震の震源付近の応力変化を計算した。福島沖地震の震源域付近では、東西圧縮的な応力が地震直後からも着実に増加し、応力パターンは横ずれ的から徐々に逆断層的に変化している。今回の福島沖地震は東西圧縮の逆断層型地震であると考えられており、計算で示した応力変化はこのような震源タイプと整合する。よって、今回の福島沖地震は、2011年東北沖地震時のみならず、地震後10年間の変動も合わせた応力変化もあり、引き起こされた可能性が示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、三年間の研究期間で、北海道-千島海溝系についてa) 有限要素モデル(FEM)の構築、b) 測地データインバージョン、c) 応力計算の3項目を行うこととしている。研究を効率的に進めるために、申請者の過去研究を適宜参照しながら行う。 a)のFEM構築は一昨年度にほぼ終了した。 b)については、国土地理院GEONETのGNSSデータを使用し、千島海溝のすべり速度欠損分布を用いた。日本海溝については、既存の研究(Hashima et al. 2016, EPS)に基づいて設定した。理想的には、千島-日本海溝の統一的なインバージョンによってすべり速度欠損分布を求めた方が良く、これは2021年度に行う。 c)については得られたすべり速度欠損分布をFEMに入力し、北海道-東北地方の応力分布を求める、この地域の震源断層面にかかるクーロン破壊関数も求めた。また、2021年2月に発生した福島沖地震について、本研究の応力計算手法を用いて、地震発生メカニズムについて検討した。 以上により、a-c)という本研究の枠組みに必要な道具立ては全て揃った。2021年度はこれらを用いて、北海道-千島海溝系の内部構造と震源断層の活動性の関係を検討していくことになる。以上で行った研究の成果については、EGU2020、JpGU-AGU2020などの学会で発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに整備したシミュレーションモデルとインバージョンプログラムのもと、今後は具体的に北海道の地殻変動データを用いて研究を進めていく。 まず、北海道の地殻変動の基本的な性質を調べるために、昨年度検討したすべり欠損速度分布を用いてフォワード計算を行う。特に、内部構造、特にリソスフェア-アセノスフェア境界(弾性-粘弾性層境界)が与える影響を調べ、北海道下の地震波速度構造分布との整合性を検討する。GNSSデータからは、スラブにより冷却された上盤マントルの先端部分(Cold Nose)や前弧-背弧の構造不均質の影響が指摘されている。これらの影響と、より広域的な大陸/海洋プレート構造、マントルの成層構造を合わせて、千島海溝における沈み込み帯の構造を絞り込む。最終的に、最適構造を決定するにはインバージョンを用いて検討する。また、GNSS以前の三角測量、水準測量、験潮記録等の測地データおよび千島海溝における繰り返し地震履歴との比較により、千島海溝の固着の安定性を数十年のスケールで検証する。 インバージョンで得られたプレート間の固着レートをFEMに入力し、地下の応力蓄積速度を求める。震源断層の形状から断層面上の応力ベクトルを計算し、さらに断層破壊に対する応力の影響を評価するクーロン破壊関数(ΔCFF)を求める。断層面形状に関しては、文部科学省の日本海地震・津波調査プロジェクトによる結果を用いる。得られたΔCFFと実際の地震活動を比較し、プレート間固着による応力蓄積プロセスと実際の地震活動の関係について検証を行う。 以上で行う研究の成果をJpGU2021、AGU2021で発表し、論文にまとめる。
|
Causes of Carryover |
当該年度の研究に必要な経費は全て使用した。コロナ禍により、学会費や出張費を使う必要がなくなった。残金は翌年度に回し、物品費やソフトウェア、データ費またはバックアップのためのハードディスク費として使用する。
|