2020 Fiscal Year Research-status Report
Effect of pore pressure change in brittle-ductile transition to earthquake cycles
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19K04038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野田 博之 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50619640)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脆性塑性遷移 / S-C-C'マイロナイト / 動的破壊 / 境界積分方程式法 / 摩擦実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
脆性塑性遷移において生成されるS-C-C’マイロナイトの構造に着目し、剪断帯と斜交した面での滑りによる脆性変形と剪断帯全体に亘る塑性変形をテンソルとして合成することにより、遷移域における剪断帯の構成則を定式化、定常状態について解析した。既に提唱されているtwo-mechanism modelでは、応力を共有する摩擦滑りと結晶塑性変形に関して、単純剪断変形しか考慮されておらず、実験に反して遷移域における強度が大きくなってしまう不具合があった。本構成則モデルではその問題が克服された。また、これまでほぼ着目されていなかった剪断帯に平行な応力が、剪断帯の内部構造と剪断強度を決める上で重要なはたらきをする事を見出した。本研究成果は国際学術誌(Journal of Structural Geology)に発表した。 断層運動の数値計算において、境界積分方程式法(BIEM)は半解析的手法であるため高精度の解が計算できる点と優れた省メモリ性のため、重要な手法である。しかし時間発展の安定性に難があり、人工的な粘性を加える等の工夫が必要であった。過去にスペクトル法で有効であった予測子・修正子法が数値安定性を大幅に改善できる事を見出した。この手法により動的破壊シミュレーションにおける混合モード破壊や自由表面を安定的に解けるようになった。本研究成果は国際学術誌(Earth, Planets, and Space)に発表した。 高圧ねじり試験機の垂直応力保持をする為の制御部を調達した。前年度にハード部分(油圧の微調整の為のサーボモータ等)を既に調達しており、今年度はフィードバック制御のための電子的な機構を調達した。これにより、長時間の実験が容易に行えるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による実験や試験機業者との打ち合わせの制限のため、当初の計画ほど実験的研究は進まなかった。しかし、必要な機材の調達は終わり、実験的研究に関しては最低限の進捗はあったと評価している。実験が困難であった時期に、本計画が目指す脆性塑性遷移を考慮した地震サイクルシミュレーションの高度化の為に必要な断層構成則のモデルの研究及び数値手法に関する研究は大幅に進捗した(国際誌論文2本)。この事を合わせて評価すると、概ね順調に進捗があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年度は、まずはこれまでに構築した実験システムを用いての実験データの取得と、提唱した構成則モデルとの比較を行う。特に、脆性変形が始まるあたりの変形条件における剪断帯の幅の変化に着目し、構成則モデルの精緻化を図る。前年度に提唱した構成則では、摩擦滑りによる変形は空隙率の変化を伴わない剪断歪のみの変形と仮定していたが、変形時の空隙率変化を実験的に実測できれば、この部分を高度化し、断層帯における間隙水圧の変化を考慮に入れる事ができるようになる。その上で、地震サイクルシミュレーションへ実装する事を目指す。
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Causes of Carryover |
残額の1735円は、少額である。当該年度の経費はほぼ使い切ったが、無理にゼロに調整する事を行わなかった。最終年度に行う実験の為の消耗品代として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)