2021 Fiscal Year Annual Research Report
断層物性科学と動力学解析の統合による南海トラフ地震破壊伝播過程の解明
Project/Area Number |
19K04039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣野 哲朗 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (70371713)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 南海トラフ地震 / 断層 / 動力学解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレート境界断層の海溝付近での大規模滑りの発生メカニズム解明とその定量的評価を目的とし、最終年度は南海トラフの熊野沖でのプレート境界断層の滑り挙動における断層物質の鉱物組成の影響について精査した。国際統合深海掘削プロジェクトの第316次航海において、プレート境界から派生する巨大分岐断層の試料が海底下271.30 mから採取されており、先行研究によって、その断層試料の摩擦係数が0.06および0.21と計測されている。さらにthermal pressurizationの影響を考慮した数値解析によって、摩擦係数が0.01-0.04と算出されている。これらの値を用いて、巨大分岐断層の地震時の滑り伝播過程の動力学数値シミュレーションを実施した。震源は海底下11 kmと設定し、3 MPaの応力降下によって地震を発生させ、その滑りが断層沿いに伝播する時空間発展を解析した。その結果、0.01-0.06の摩擦係数の場合には、約30 mの滑りが海底付近で発生することが判明した。一方で、摩擦係数が0.21の場合、震源からの滑りは抑制され、海底付近での滑りはほぼ0であることも判明した。さらに、環境条件の影響として、断層の間隙水圧が地震前にほぼ静岩圧に等しい場合でシミュレーションを実施した結果、断層の摩擦係数が0.21であっても、海底付近では約25 mの滑りが生じうることも明らかになった。以上の結果は、プレート境界断層および巨大分岐断層の海底付近の滑り量は、断層の摩擦係数のみならず初期の間隙水圧の状態に大きく依存することを示唆している。さらに、これらのわずかな値の差が、破壊伝播過程や最終的な滑り量に大きな影響を与えうることも示唆する。
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Research Products
(8 results)