2020 Fiscal Year Research-status Report
液体鉄合金の高圧下音速測定に基づくコア軽元素の解明
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19K04040
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中島 陽一 熊本大学, 大学院先導機構, 助教 (50700209)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地球コア / 液体鉄軽元素合金 / 音速 / 非弾性X線散乱 / 高圧高温 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地球中心コアの化学組成を明らかにするために液体Fe軽元素合金の音速を、実際のコアの圧力領域で測定し、コア軽元素を解明することを目的としている。音速測定には、レーザー加熱式ダイアモンドアンビル高圧高温発生装置を用いて、非弾性X線散乱法を用いた。今年度は、これまでに改善を行ってきた実験技術を用い、液体Fe-N及びFe-Sの非弾性X線散乱測定を行い最大で100GPaでの縦波速度を決定することに成功した。これらの結果は、これまでに我々が行ってきた50GPaまでの低圧での測定と矛盾しない結果であり、Nは液体Feの縦波速度を著しく増加させ、一方でSの効果はそれほど大きくないことが明らかになった。本測定結果と地震波観測で得られる液体外核のP波速度との比較から、それぞれの元素の液体外核中濃度の制約を精度良く与えることが可能となった。 これまでに行ってきた液体Fe-Pの音速測定の結果をまとめ、液体Fe-Pの状態方程式を構築し、地球外核中のリンの濃度に制約を与えた。その結果、隕石や岩石試料中のリン濃度から見積もられたいたコア中のリン存在量を十分に満たすことが明らかになった。今年度この成果について、国際誌において発表を行った。また、液体Fe-Pの音速測定を行って行く過程で固体Fe2Pの新たな高圧相を発見した。この高圧相の相平衡関係及び圧縮特性についてX線回折法により詳細に調べ、この新高圧相が地球型惑星の金属核を議論する上で重要な相であることについて国際誌で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、液体Fe-軽元素合金のコア圧力条件下での音速測定を目的に、実験及び測定技術の開発と最適化を行ってきた。これまでの研究で、液体Fe-P合金の音速を96GPaで測定することに成功していたが、取得できたデータの信頼性及び再現性について確証が得られていなかった。今年度は更に同様の測定を、100GPaの圧力条件付近で繰り返し行い改善を加え、さらに良質なデータを同圧力で高確率で取得できるようになった。さらに、他の軽元素合金であるFe-NおよびFe-S合金についての音速も100GPaで決定することに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、液体Fe軽元素合金の音速を100GPa程度まで測定することが可能となった。しかし、それ以上の圧力では、アンビルの破損や、測定中の加熱の不安定化、シグナルの低下により、解析に必要な統計精度のデータ取得に成功できていない。今後、さらに136GPaまでの測定が行えるように、さらに実験技術の向上に務める。
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Causes of Carryover |
今年度に計画していた実験の一部が新型コロナの影響により行えなかったため。この実験は次年度6月に行う予定であり、使用する予定であった物品費および旅費を繰越し、この実験に充当する。
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Research Products
(8 results)