2019 Fiscal Year Research-status Report
微小・微量鉱物に残された太古代変成作用とテクトニクス
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19K04043
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
青木 一勝 岡山理科大学, 基盤教育センター, 准教授 (70586677)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 太古代 / 変成岩 / チタナイト / 石英 / U-Pb |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、太古代岩石中の特に微小・微量鉱物に注目し、LA-ICP-MSやEPMAなどの分析装置を駆使し、その生成情報を読み取ることを試みている。本年度は、以下の2点について行った。①南アフリカ、バーバートン緑色岩帯中の高変成度岩石(ザクロ石角閃岩)の最高変成圧力条件をより詳細に制約するため熱力学的解析と石英圧力計解析を行った。ザクロ石とそれに包有されている微小石英との間には、圧力変化に伴う膨張率が異なり、その結果石英がザクロ石に包有された時の圧力条件は、常温常圧下に置かれた際、二つの鉱物間の膨張率の違いとして表れ、ラマン分光の周波数シフトから推定できる。まず、岩石熱力学的解析を行った結果、最高変成圧力時に600-680℃の温度条件で変成作用を被ったことが分かった。次にその変成温度条件をベースに石英圧力計解析を行ったところ、最高変成圧力は、10.0ー12.7 kbarであることが分かった。 ②チタナイト鉱物は様々な火成岩や変成岩に含まれており、そのU-Pb年代値はマグマからの結晶化年代や,熱変成イベント時の冷却年代を制約することに使える。本研究では変成岩中のチタナイトのLA-ICP-MS U-Pb年代分析から変成作用年代を制約するため、まず、LA-ICP-MSのチタナイトU-Pb年代分析の標準試料(MKED1とBLR-1)の測定とその結果の整合性チェックを行った。その結果、U-Pb年代値についてはBLR-1チタナイトとNIST SRM 612を組み合わせて外部補正試料に用いた場合は、参照値とほぼ一致する年代値が得られた。しかし91500ジルコンとNIST SRM 612を用いた場合は、参照値よりも明らかに若い年代が得られた。このことから、チタナイトU-Pb年代値はアブレーション時のマトリックス効果の影響が大きいことが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、ターゲットとしている鉱物の分析自体は行うことができた。しかし、系統的な岩石学的解析や地球化学的分析が順調に行えたとは言い難い。理由としては、①分析に適したザクロ石中の石英包有物の選定が想定よりも困難であった、②チタナイト標準試料の取得に時間がかかった、③ 年代・微量元素測定に適した大きさのチタナイトがなかなか見つからない、ことが挙がられる。最終的に①と②については解決できたが、③については、現在も探索中である。②の結果は学術雑誌に投稿し、受理されたが、分析の遅延により、全体的に当初の予定より論文投稿が遅くなっているのは否めない。 ③について引き続き探索を進め解決し、LA-ICP-MSを使った分析・解析をこれまで以上に迅速に行い、①の結果と踏まえ少しでも早く研究結果を学術雑誌へ投稿するように努める。 以上のことを踏まえ(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の方策として、以下の方策をたてる。 ① チタナイトのU-Pb年代分析と微量元素分析: チタナイトは単一粒子として形成することが多いため、顕微鏡観察やEPMA組成分析を用いて変成起源のチタナイト粒子を特定し、かつジルコンとともにU-Pb年代分析を行うことで、母岩の変成作用の時期をより正確に特定することができると予想される。本研究ではまず、これまでの研究によりその分析法の有用性が確かめられたLA-ICP-MSチタナイトU-Pb年代分析法を変成年代や変成温度圧力条件がある程度明らかになっている試料(日本産高圧変成岩やイギリス産高圧変成岩)に適用し、天然の岩石試料におけるチタナイトU-Pb年分析値の信頼性の検証を行う。また、チタナイトは元素置換反応によりCaのサイトにZrが入り、その含有量は温度圧力図上で等値線として示される。そこで、チタナイト中のZrの含有量をLA-ICP-MSを用いて求め、その値からチタナイト形成反応線を温度圧力図上に示すことで、天然の試料においてLA-ICP-MSチタナイト微量元素分析がどの程度の信頼性を持っているのかを検証する。その信頼性確認後、上記手法を太古代試料に適用し、太古代変成作用や火成活動の時期やより詳細な変成温度圧力条件を特定していく。 ② ジルコン微量元素分析: ジルコンに含まれる微量元素のうち、U-Nb-Sc-Yb-Gd-Ceの元素比は形成場ごとに異なる特徴を示すことが分かっている。これは、形成場によってマグマから晶出する、もしくは部分溶融する鉱物種が異なるため、残マグマの組成を反映するジルコンの微量元素組成は形成場ごとに異なる特徴を示すからである。そこで、本研究では太古代研究試料中に含まれるジルコンのLA-ICP-MS微量元素分析を行い、U-Nb-Sc-Yb-Gd-Ceの判別図などから当時の変成岩形成場・形成環境について考察していく。
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Research Products
(2 results)