2021 Fiscal Year Research-status Report
硫化物・硫酸塩を含む試料中の微量有機物・軽元素同位体比分析法の確立
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19K04048
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 洋平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋生物環境影響研究センター), 特任技術副主任 (90756199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤崎 渉 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80815192)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 硫化物 / 元素分析 / 硫黄 / コバルト / バナジン酸銀 |
Outline of Annual Research Achievements |
バナジン酸銀・酸化銀・酸化銅・酸化コバルトを組み合わせた高温炉を作成し、反応炉の含硫化合物の除去能のテストを行いました。その結果、硫黄除去用の試薬の能力を評価にあたり、試薬そのものの性能に加えて、試薬の粒度・形状・空隙率の差による影響が大きいことが分かりました。中でも、反応管の内径に対する試薬の粒度の比率の影響は大きく、反応管の内径が10mmを下回る場合には、チャネル効果(反応管内壁面と試薬の隙間により、反応ガスが除去される機会を得ずに反応管内部をすり抜けてしまう)の影響が出やすくなり、試薬の硫黄除去能が十分に発揮できないことが分かりました。これを防ぐために、反応管内部に試薬を充填した後に、上下方向に軽く振動を与えることにより、試薬の粒の空隙率を低減しました。その結果、上下方向の振動による圧縮は逆効果であり、チャネル効果が増大し、硫黄除去能力が減少してしまうことがわかりました。そこで、次段階では前実験とは反対に、反応管内部の試薬へ上下方向の振動は与えずに、自然落下によるパッキングを行いました。その結果、硫黄除去能力は向上しましたが、能力を発揮する前段階でのすり抜け効果が発生することがわかりました。これらの結果により、高感度分析においては、通常の粒度の試薬を用いることは有利ではなく、粒度の細かい試薬を用いることで問題解決が可能となるのではないかと考え、メッシュの細かい試薬を作成して硫黄除去能の評価を行っています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作成した高温炉を用いて、含硫化合物の除去能のテストを行いました。硫黄除去用の試薬の能力を評価し、試薬そのものの性能に加えて、試薬の粒度・形状・空隙率の差による影響を調べました。空隙率の調査に続き、試薬の粒度を最適化するために、メッシュの細かい試薬を作成し、ふるいを用いて一定の粒度幅の試薬の粒を集めて分析に用いました。その結果、コーティング後の試薬の粒度を調整することでコーティングが剥がれてしまい、硫黄除去能力が低下してしまうことがわかりました。そこで、細かい粒度の試薬を作成した後に、コーティングを施す手法を考案し、新たな試薬の製作を開始しました。しかし、世界的な物流の遅れによって、試薬の原料であるコバルトの納入時期が遅れてしまったことに加え、昨年の秋以来の世界的なヘリウム供給危機によって分析スケジュールが遅れていることから、本研究はやや遅れていると判断します。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、硫黄除去手法を最適化させ、実試料、特に生体硬組織・海底堆積物・陸域堆積物・化成品など種々の含硫化合物への本手法の適用性を確認し、成果を公表する予定です。手法の完成のために、特に小粒径の試薬について、系内での種々触媒の分布・粒度・形状・空隙率の最適化と、系内圧力とキャリアガスの流速について種々の組み合わせによる試験を行い、最適な範囲を選定します。
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Causes of Carryover |
年度途中にはじまった世界的なヘリウム供給危機により、分析用のキャリアガスが手に入りにくくなり、キャリアガスの予定購入本数の変更が必要でした。また、世界情勢による物流の乱れにより、本研究で用いるための試薬の原料の輸入が遅れ、入手の目途がたたない時期が発生しました。それにともない、原料からの試薬の製造が遅れ、試料分析のスケジュールが乱れ、購入予定試薬の一部を購入できなかったことにより、使用額に差異が生じました。2022年度の分析に使用するためのキャリアガスの入手目途は経っている(6月中に納入の予定)ので、実試料分析に用いる消耗品類の購入を行い、分析を進める予定です。
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Research Products
(2 results)