2020 Fiscal Year Research-status Report
急激な温暖化に対する深海生物の応答の研究:ベーリング海の底生有孔虫の解析
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19K04056
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大串 健一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10312802)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 底生有孔虫 / ベーリング海 / 溶存酸素極小層 / 第四紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から引き続きベーリング海の海底コアPC23A及びベーリング海との広域対比のために北海道南東沖海底コアPC1の底生有孔虫群集の解析を行った。現代の北太平洋では,水深500mから1500mの中深度において溶存酸素極小層(Oxygen Minimum Zone: OMZ)が広く形成されている。このOMZにおける酸素濃度は最終氷期以降に劇的に変動していたとする報告がある。この変動の原因となる環境要因を明らかにする上でもベーリング海と北海道沖太平洋の対比は有効と考えられる。北西太平洋に分布するOMZは,オホーツク海に由来する中層水が酸素を上部中層深度に供給するため、東太平洋より約500 m深い水深約1kmに位置している。OMZの強度は、北太平洋中層水(North Pacific Intermediate Water:NPIW)の循環と生物生産の影響を受ける。北日本の東海岸に沿った亜寒帯親潮地域は,NPIWの流域の近くに位置している。海底コアMR04-06 PC1は,亜寒帯親潮水域に位置する北海道苫小牧沖の水深777mから得られた堆積物柱状試料である。本コアについて、底生有孔虫群集を分析し,過去約16,500年間における海底の溶存酸素変動及び群集変動からOMZの上層変動を明らかにした.特に急激に温暖化したB/A期に注目するため,その時期を高分解能で分析した。得られた各底生有孔虫は富酸素種群(溶存酸素量[O2]>1.5 mL/L),低酸素種群([O2]=0.3~1.5mL/L),貧酸素種群([O2]=0.1~0.3mL/L),その他の種群の4つに区分した.その結果,最終退氷期の温暖化に伴い,貧酸素種が増加することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度の前半は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、試料処理等の分析のために雇用していた研究支援員の研究室での試料処理作業ができなくなった。このため当初予定していた試料数には達していない。しかし、北海道沖の海底コアPC1の底生有孔虫群集データについては、最終氷期退氷期についてまとめることができた。これにより、これまでの研究成果の一部は、査読付き国際学術雑誌に研究成果を発表した。ベーリング海の海底コアについては、1本について分析層準を増やして底生有孔虫群集のデータを追加し,高時間分解能での時系列データの取得を目指して分析を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は最終年度となるため、可能な限り遅れを取り戻し、海底堆積物の試料分析を継続して、ベーリング海の底生有孔虫群集の分析結果についてまとめて論文投稿を目指す。可能であれば、これまで未着手であった2本のベーリング海の海底コアについても分析を開始する。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言により試料処理等の研究活動の制限を受けた。さらに、研究を実施するためには配分された予算額は決して十分ではく,試料処理のための支援員の雇用及び投稿論文の英文校閲費用など今後多くの支出が見込まれるため,当初の予定よりも支出を抑えて次年度使用額を増やしたためである。
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