2020 Fiscal Year Research-status Report
超微細組織を有する金属材料の力学挙動の数理モデル化
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19K04066
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
黒田 充紀 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70221950)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金属材料 / 強度 / 粒軽 / 強ひずみ加工 / 材料モデリング / 界面効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
強ひずみ加工による超微細結晶粒を持つアルミニウム材を対象に、強度(変形中の流動応力)を、非熱的(時間非依存)成分と熱的(時間依存)成分に分離した。ひずみ制御方式の24時間応力緩和試験を用い、試験結果を外挿して無限時間経過後の残存応力値(予測値)を非熱的応力と定義した。強ひずみ加工(本研究ではequal-cannel anglar pressing法=ECAP法を採用)により結晶粒は微細化(平均粒径44um[ECAP 0 パス時]-->1.6um[ECAP 8パス加工終了時])されるものの、非熱的強度はECAP 1 パス後が最大で、その後繰返されるECAP加工に伴って大幅に低下(軟化)することを明らかにした。具体的にはECAP 8 パス後の非熱的強度はECAP 1 パス後のそれの約1/3まで低下した。これによりHall-Petch則として認識されている「結晶粒微細化=高強度」という常識は巨大ひずみ加工アルミニウム材には当てはまらないことが判明した。ECAP 8 パスを施した材料に低温度焼鈍(175℃; 0.5h or 6h)を施したところ、非熱的強度は約5倍に増大した。これらの現象を説明するために降伏応力を時間依存成分と非時間依存成分に加算的に分解する数理モデルを構築した。 超微細結晶粒材に関する付随的な研究として、蒸着による微細結晶材料層(弾塑性体)とシリコン(弾性体)の界面のモデル化について検討した。微細構造を持つ材料の界面は、マクロには変位が連続な状態であっても、ミクロには塑性変形の拘束条件(連続体力学では(付加的)高次境界条件)が変化し、それが大きな力学的寸法効果として現れる可能性を示唆するモデルを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 研究計画当初の学術的問い「A)粒径が小さいことが強度の主要因であるという認識は正しいか?」に対しては、「巨大ひずみ加工まま材では,結晶粒微細化による非熱的強度の強化はない」ということを確かめた。「B) 粒界は転位運動の障壁である認識は一般に正しいか?」の問いについては、巨大ひずみ加工による結晶粒微細化に伴う非熱的強度の上昇はないことから、必ずしも 粒界は転位運動の障壁ではないことが強く示唆される。「C)巨大ひずみ加工まま材は著しい粘性を持つが、この粘性は低温焼鈍で大幅に低減される。これが巨大ひずみ加工材の高強度発現過程ではないか?」に対しては、実際に低温焼鈍後の非熱的強度の定量的評価を行い、少なくともアルミニウムについてはこの仮説が正しいことを確かめた。 これらの実験結果を再現するための簡易数理モデル(弾粘塑性型)を定式化した。また、粒界に限定するものではないが、内部界面の微視的力学モデルについて検討し、界面における塑性変形の自由度が力学的条件によって変化するという仮説に基づくモデルを構築し、その有効性を確認した。 以上の進捗状況により、少なくとも3年計画の2/3程度の目標は達成できており評価は(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、アルミニウムのみではなく、複数の金属、合金を用いて検討することとしていた。現在、IF鋼、純銅、Mg系アルミニウム合金(A5000系)について実験研究を行なっており、数理モデルのさらなる高度化と共に、これらの材料についての実験結果をまとめることが最終年度の目標である。これまで得られているアルミニウムにおける知見とどこが共通でどこが異なるかを鮮明にしたい。
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Causes of Carryover |
研究発表を予定していた学会がWEB講演会に切り替わったことが主な要因である。
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