2019 Fiscal Year Research-status Report
六自由度ランダム振動と熱衝撃を受けるマイクロ接合構造の強度信頼性
Project/Area Number |
19K04068
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
澁谷 忠弘 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 教授 (10332644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 界面強度 / HALT / 六自由度振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,樹脂材料と金属で構成されるマイクロ接合構造を対象とする.近年,SiC等の大電流モジュールなどでは,材料の耐熱化が主要な課題となっており,封止樹脂材料などの耐熱性が相対的に低い材料の信頼性が課題となっている.樹脂-金属接合部と樹脂材料の耐熱性に着目して,六自由度ランダム振動試験を実施する.樹脂のガラス転移点近傍に近い高温環境で試験を実施して温度依存性を抽出するとともに,ランダム振動と温度変化を同時に付与した複合試験も実施して,損傷挙動の予測を試みる. 初年度は高耐熱樹脂材料の基礎界面強度物性の取得を目的として,別のプロジェクトで実施された機械的せん断接合強度試験の結果を用いて,界面強度同定の高度化を進めた.具体的には,得られた荷重とCohesive Zone Model(CZM)を用いた有限要素解析により,界面のエネルギ解放率を同定した.本手法は,界面強度の同定に有効な手法として実施例が報告されているが,樹脂の複雑な非線形特性や不均一な接合状態まで考慮したものは少ない.推定値の妥当性を確認するため,機械的せん断試験に加えて成形時のはく離状況を確認したデータを利用して,異なる負荷方法に対しても同程度のエネルギ解放率を推定できることを確認した. 続いて,六自由度ランダム振動試験における強度評価を実施するため,試験片の設計方法について検討した.当初はウェイトを付与したモデルを想定していたが,界面強度が比較的低いこと,また高温時に見かけ上強度が低下することを勘案し,樹脂の自重によって破断させるほうほうをまず検討することとした.六自由度ランダム振動試験装置の実施は,2020年度を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載された項目を予定通り実施しており,概ね順調である.とくに,Cohesive Zone Model(CZM)を用いた有限要素解析で機械的せん断試験結果からエネルギ解放率を推定し,さらに簡易実装モデルをもちいてその妥当性を確認した.これにより試験方法によらない材料物性値として界面強度特性を抽出することに成功している.引き続きCZMモデルによる界面強度の高精度化に取り組み,得られた値の一般性を確認していく予定である.得られた界面強度が相対的に低い値であったことを勘案し,まずはウエイトなどの負荷をかけずに試験を実施して,純粋に六自由度ランダム振動による破壊挙動を調査していく.このように,次年度実施する六自由度ランダム振動条件での界面強度特性を定量化できる見通しが立てることができたことで,次年度実施予定のランダム振動試験の計画もスムーズに進めることが期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
樹脂っと金属の界面強度について,機械的せん断試験から推定することが可能となったことで,次年度予定の六自由度ランダム振動試験についても精度を上げていくことでより詳細な破壊機構を抽出できる可能性がある.このため,試験装置である高加速限界加速試験装置にについて,より定量的な評価が可能となるように加速度などのセンサーを追加するとともに,振動挙動の測定系について再度検討を行う予定である.振動台への設置方法などを検討する.また,できるだけ正確な評価を実施するため,なるべく温度が均一になるように液体窒素の噴射方法などについても検討を行う. 六自由度ランダム振動試験に供する試験体は,樹脂の界面構造のプロセス依存性に配慮して,機械的せん断試験と同等のプロセスで作製したものを用いる.また,多様な周波数振動が負荷されるため,樹脂のひずみ速度依存性(粘弾性特性)についても考慮が必要である.このため,界面強度への粘弾性特性の影響についても引き続き検討を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
年度末に次年度実施の試験体を準備予定であったが,コロナの影響で納期が年度内に間に合わなかったため,発注を次年度以降に変更した.なお,この事由による次年度以降の使用計画の変更はなく,次年度に予定している六自由度ランダム振動試験を実施するとともに,新規に発注した試験体の界面強度特性の予測を行う.
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