2019 Fiscal Year Research-status Report
3D積層造形による生体材料としての傾斜構造を有するβチタン合金の創製
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19K04070
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
植松 美彦 岐阜大学, 工学部, 教授 (80273580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿内 利文 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20452039)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 積層造形 / 複合構造 / チタン合金 / 強度特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常の手法で作製した溶製のβ型Ti合金上に,粉末のTi-6Al-4V合金粉末を積層造形することで,ハイブリッドな構造を創製する.まずはハイブリッド構造体をシミュレートし,界面構造の観察手法や残留応力の測定手法を確立するため,準備段階として汎用性のある鉄鋼材料のマルエージング鋼を選択し,溶製鋼板の上に同材の粉末を積層造形することを試みた.Powder Bed Fusion(PBF)形式のSelective Laser Melting(SLM)機に厚さ16mmの板材を設置し,その上に厚さ2mmで,引張り試験片の形状となるように積層造形を施した.放電加工によるスライスを行い,積層造形部と溶製部がいずれも2mmとなるハイブリッド構造体を作製することに成功した.ハイブリッド構造では界面を境として微視構造は大きく変わるが,界面における冶金学的な接合状況は良好であることを確認した. ハイブリッド構造体では,溶融した原料粉末が固相の溶製板材上で連続的に凝固する.その結果,スライスした試験片は積層造形部側に凹,溶製部側に凸となり,強い残留応力の発生が確認された.そこで,試験片にひずみゲージを装着し,湾曲した試験片を再度真直とした際に発生するひずみを残留応力として換算した.その結果,積層造形部側に約240MPaの引張り残留応力が発生していた.ハイブリッド構造体を用いて疲労試験を行ったところ,疲労強度は溶製材より大きく低下した.この原因は,破面観察から積層造形部側にある欠陥から疲労き裂が発生することが主因であることが判明したが,強い引張り残留応力も一因である.ハイブリッド構造を作製する際,積層造形部側での引張り残留応力を低減する必要性が指摘された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,溶製部と積層造形部のハイブリッド構造について,界面部の組織と積層造形時おける入熱の影響を理解することができた.また,積層造形時に発生する残留応力について,定量的に評価する手法を確立するとともに,積層造形部に引張りの残留応力が発生することを明らかにし,ハイブリッド構造の強度に対する重要な影響因子となることを示すことができた.また,疲労損傷評価の基礎となるS-N線図を取得することができた.以上のように初年度は,溶製部と積層造形部からなるハイブリッド構造の作製と基礎的特性の把握が終了し,予定通りの進捗と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
汎用的な鋼材において,溶製部上に積層造形するハイブリッド構造の作製に成功し,微視組織や残留応力などの特性を把握する手法の確立,疲労試験片の形状や試験方法の妥当性などを当初の予定通り確認することができた.そこで,溶製部をTi合金板に変更し,その上にTi-6Al-4V合金粉末の積層造形を行う.初年度に確立した各種の手法を用いて,Ti合金における界面組織の把握,残留応力の定量評価を行う.さらに,Ti合金でのハイブリッド構造体が,どのような疲労強度を有しているか,ハイブリッド構造の強度を律則する因子は何なのかを把握する.また,強度を律則する因子が判明すれば,それをコントロールすることで,ハイブリッド構造体の高強度化を試みる.
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