2021 Fiscal Year Research-status Report
In silico骨代謝動態観察に基づく骨の力学的適応機構の解明
Project/Area Number |
19K04074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀尾 佳貴 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (60611431)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 骨リモデリング / 力学的適応 / in silico実験 / バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、骨代謝・リモデリングにおける微視的な分子・細胞の複雑な相互作用と巨視的な組織・器官の適応変化とを関連付けた数理モデルを構築することにより、力学的負荷に応じて骨組織内部で生じる細胞間シグナル伝達、個々の骨構成細胞動態、骨形態変化をコンピュータ上で同時観察することを可能にするシミュレーション基盤の構築を目指している。以下に、本年度中の主な研究実施内容と、得られた成果をまとめる。
1.骨細管ネットワーク内における間質液流れ解析 骨細管の複雑なネットワーク構造が、間質液の流れを介して骨細胞への力学刺激に及ぼす影響を明らかにするため、FIB-SEMにより取得した骨基質中の骨細胞画像から、間質液の流路である骨細管ネットワーク形態を3次元再構築し、このイメージベースモデルを用いて内部の間質液流れを解析した。生体内の骨細管ネットワークには、行き止まりや分岐、合流、肥大部などの特徴的な構造が観察され、このような構造が間質液流れに不均一な流速分布を発生させ、骨細胞に負荷される流れ刺激を増幅させている可能性が示唆された。 2.骨損傷発展とリモデリングの連成数理モデルによる骨量・骨質変化のin silico解析 前年度までに構築した骨損傷発展とリモデリングの連成数理モデルを用い、様々な力学的負荷条件下や骨代謝条件下における、マウス大腿骨海綿骨のリモデリングシミュレーションを行った。その結果、低荷重や骨粗鬆症に起因する骨量の減少のみならず、過荷重にともなう骨損傷の蓄積により生じる骨質の低下を再現することができた。さらに、シミュレーションにより得られた骨形態と骨損傷から海綿骨の見かけの剛性を導出し、骨量・骨質という多角的観点から海綿骨の荷重支持機能の変化をin silico評価することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、骨代謝における複雑な分子・細胞動態と組織・器官の形態変化をコンピュータ上で同時観察できるシミュレーション基盤の開発に成功し、これを用いて骨リモデリング現象の統合的な解析を可能にしたことから、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した骨リモデリングのシミュレーション基盤の医療応用を目指し、代謝性骨疾患に対する種々のin silico投薬実験を行い、薬物治療効果の予測を試みる。また、これまでの研究成果をまとめ、国際会議や国内学会にて研究発表を行うとともに、学術論文を作成して国際学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
令和2年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、参加を予定していた国際会議や国内学会がすべてオンライン開催となり、また、感染拡大防止の観点から、高性能ワークステーションの購入を見送ったため、関連する旅費、物品費に相当する繰越金が発生した。 次年度は、この繰越金を国際会議や国内学会にて研究発表を行う際の旅費・参加費、および、学術論文を国際学術誌に発表するための英文校閲費・論文投稿費に充てる予定である。
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Research Products
(15 results)