2020 Fiscal Year Research-status Report
応力・ひずみ・拡散性水素の不均一分布を考慮した水素割れの微視組織形態依存性の解明
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19K04075
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三上 欣希 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (40397758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素割れ / 水素拡散 / ミクロ組織 / 微視的応力 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
二相ステンレス鋼溶接金属では溶接条件や化学組成によってさまざまな分布形態や分率の微視組織が存在すると考えられ,それらについて,応力集中や水素集積の程度を把握しておくことは,溶接部の組織制御指針にもつながる重要な知見である.そこで本年度は,分率を変化させた二相ステンレス鋼溶接金属の微視組織モデルを作成し,弾塑性解析および水素拡散解析により,応力集中および水素集積に及ぼす微視組織の影響を検討した.フェライト相の分率は25%程度から75%程度まで変化させた.これらの組織分率を有する微視組織モデルに引張負荷を作用させる弾塑性解析の結果,フェライト相分率が高くなるほど,微視組織モデル内に生じる応力の最大値は高くなる傾向にあることを示した.なお,高い応力値はフェライト相に生じていた.続いて弾塑性解析によって得られた応力分布を拡散の駆動力とする水素拡散解析を実施した.水素チャージ材の低ひずみ速度引張試験を想定し,正規化濃度(いわゆる活量)一定となる条件を初期状態とし,微視組織に起因する応力分布によって拡散集積する挙動を数値解析した.その結果,高い引張応力を生じるフェライト相に拡散性水素が集積することが確認できたが,集積した位置の拡散性水素濃度はフェライト相分率によらずほぼ同程度であった.すなわち,フェライト相分率の増加によって,微視組織レベルの応力が高い位置は増加するが,その位置における拡散性水素量はフェライト相分率によらず同程度であるという結果となった.この結果は,フェライト相分率が変化した場合,一般にはフェライト相分率が高い方が割れ感受性が高いとされる傾向に対し,微視組織レベルの応力が高くなることが起因して割れが生じやすい可能性を示唆している.なお,この結果は初期に水素が十分にチャージされた場合に対するものであり,次年度は,他の条件に関しても検討する計画にしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの実験結果や本課題で構築した数値解析手法手法を活用し,諸因子の影響評価を進められている.諸因子の定性的な影響についてはほぼ整理ができており,より実用的な条件への展開を進めているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得た知見のうち,現時点で重要と考えているのは,拡散性水素に関する境界条件の影響である.よく用いられる水素チャージ材による試験と実環境とでは,水素チャージによってある濃度の拡散性水素が導入されてから負荷を受ける場合と,負荷の作用下で表面から水素が侵入する場合とがあり,大きく異なる.これらの条件の違いに着目してモデル化を行い,その影響を明らかにしていくことが最終年度の重要な課題であると考えている.
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Research Products
(2 results)