2020 Fiscal Year Research-status Report
柔らかい電子回路に使う金属ナノ粒子配線の電流・応力下での損傷機構解明と強度評価
Project/Area Number |
19K04084
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
笹川 和彦 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50250676)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金属ナノ粒子 / フレキシブル回路 / エレクトロマイグレーション / 信頼性 / 損傷機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
(Ⅰ)金属ナノ粒子配線の損傷機構解明 (Ⅰ)-2 高密度電流負荷による損傷(EM)に加え応力負荷を重畳した加速試験による検討(R2) 昨年度実施した高密度電流のみを負荷する加速試験((Ⅰ)―1)に用いた銀ナノ粒子インクを印刷したフレキシブル配線試験片を用い、これを加熱できる半円柱形金属ブロックあるいは平板型金属ブロックに接着することにより、静的な曲げ応力を負荷した状態と負荷のない状態で、高密度電流を長時間印加して断線までの損傷蓄積プロファイルを獲得するとともにレーザ顕微鏡による損傷箇所の微視的構造変化の観察を行った。 高密度電流のみの試験結果とさらに応力負荷を重畳したときの試験結果を比較したところ、応力負荷の重畳により損傷箇所の変化は確認できなかったが、断線までの寿命が短くなる結果を得た。これにより、曲げによる配線全体への引張応力の負荷により、EMによる損傷機構において引張応力による原子拡散の移動度が増加し、EMが助長され寿命が短くなるものと考えられた。 (Ⅱ)強度評価法の構築 (Ⅱ)-1 損傷数理モデルの定式化(R3予定) 電子流による金属原子拡散と応力負荷による拡散への影響を考慮した原子の局所的損失を理論的に定式化することにより、配線の電流、温度、原子濃度を与えると、その箇所の単位時間、単位体積当たりの原子損失に対応した損傷パラメータ値を算出できる理論式の検討を図った。緻密な微視構造の金属薄膜配線と異なり、多孔質構造材料に特有な原子拡散径路となる配線内微視構造変化を考慮した数理モデルの作成に着手した。配線内温度分布のシミュレーション結果より、原子流束発散の生じやすい結晶粒構造の通電条件による変化と損傷形態との関連を検証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、(Ⅰ)金属ナノ粒子配線の損傷機構解明と(Ⅱ)強度評価法の構築の2つの大きな課題を遂行予定である。令和2年度はそのうち、項目(I)の具体的実施項目である(Ⅰ)-2 高密度電流負荷による損傷(EM)に加え応力負荷を重畳した加速試験による検討を実施予定であった。実験により、電気的負荷に対する損傷機構に対して、応力負荷が及ぼす影響を実証することができ、目的としていた応力負荷の重畳した損傷機構の解明に大きく歩を進め、当初の目的をほぼ達成できた。さらに次年度(令和3年度)に実施予定の項目(Ⅱ)の具体的実施項目(Ⅱ)-1 損傷数理モデルの定式化について、実験結果から得られた損傷機構の考察を基にモデルの検討を開始しており、次年度の研究課題である検討事項に前倒しして着手しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに順調に進捗している。令和2年度に既に前倒しで着手している、研究項目(Ⅱ)強度評価法の構築の中の具体的実施項目「(Ⅱ)-1 損傷数理モデルの定式化(R3)」を引き続き実施するとともに、令和4年度に着手予定である「(Ⅱ)-2 数値シミュレーション・コードの開発(R4)」についても、これから開発していく損傷モデルの新たな知見を踏まえてシミュレーションのコード化に取り組んでいくことにより、前倒しして進めていきたい。
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Causes of Carryover |
試験片作製に用いる使用期限付きの薬品を年度末に購入予定であったが、保有分で年度内に足りたので購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。次年度早々に当該薬品の購入が必要となる見込みで、これに充てる予定である。
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