2019 Fiscal Year Research-status Report
実機から採取した微小素材を用いた高温多軸引張クリープ試験による寿命評価法開発
Project/Area Number |
19K04089
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
旭吉 雅健 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (30342489)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多軸 / クリープ / 寿命評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
火力発電施設や航空機エンジン等の高温機器の健全性保障のためには,構造材料の適切な損傷評価が重要である。とくに,高温クリープでの損傷評価が不可欠であるが,実機では応力状態が複雑となることから,その損傷評価の精度向上のために多軸クリープ検証が要求される。さらに,検証実験に使用する試験片寸法を小さくすることで,実機の任意の局所位置から採取した素材での検証を可能とする。 研究代表者は,これまでに小型十字型試験片を用いた多軸クリープ実験手法を提案しているが,その試験片寸法は一辺が50mmである。本研究課題では,小型十字型試験片の中央標点部のみに,実機から採取した微小な素材を使用する溶接タイプ十字型試験片を用いた新たな実験検証法を開発して,寿命評価精度の向上を図る。具体的には,一辺が十数mm程度の微小素材に,別途準備する荷重負荷用腕部を溶接して評価用十字型試験片を構築する。 初年度の2019年度は,溶接タイプ十字型試験片の形状および寸法を数値シミュレーション解析で決定するとともに,最適な溶接手法を試行錯誤的に検証してその技術を確立した。具体的には,従来の一体削り出しタイプの十字型試験片に比べて,荷重負荷腕部の板厚は1.5倍程度に大きくする必要があることや,試験片の中央標点部から7mm離れた位置で,最適な条件でのEB溶接を採用することで,溶接部からの異常破断を防止して,目的とする高温多軸クリープ実験が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,計画通りに溶接タイプ十字型試験片の形状および寸法を決定した。 さらに,微小な領域に最適な溶接手法の技術も検討して最適条件等を取得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように計画的に遂行しているものの,実験検証結果数が限られている。その主な要因として,本課題で問題視している高温環境下でのクリープ現象は,実験室レベルにおいても数百時間の長さで生じる現象であることが挙げられる。また,現時点で対象としている材料は,高温構造材料としての使用実績が多いオーステナイト系ステンレス鋼に限定している。今後は,溶接タイプ十字型試験片を用いた高精度な寿命評価式を開発するために,実験数の増大と,対象材料の拡充も必要である。たとえば,クリープ寿命に及ぼす応力の影響のみならず温度の影響も考慮できる既存の手法を活用して,温度を加速した条件で実験数を増大させることを計画している。さらに,近年,高温機器の長時間使用時に諸問題が突発している高Cr鋼を対象として,その溶接タイプ十字型試験片の形状および寸法の設計にも取りかかる。
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Causes of Carryover |
溶接タイプ十字型試験片の試作費用や技術検討にかかる費用が想定よりも大幅に少額であったことが,予算額と使用額の差を生じた主な要因である。さらに,データ取得に想定以上の時間を要し,期間内で実施できた実験数が計画よりも少なかったことも,予定額よりも使用額が少なくなった要因である。
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