2019 Fiscal Year Research-status Report
Corrosion behavior of magnesium alloy tubes with several shape types in flow
Project/Area Number |
19K04095
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉原 正一郎 芝浦工業大学, デザイン工学部, 教授 (00311001)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 隆一 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (20820989)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | マグネシウム / 腐食挙動 / 材料特性 / CFD解析 / 壁面せん断応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
【①合金成分の影響】 医療用マグネシウム材料として候補となりうる、純マグネシウム、ZM21マグネシウム合金や AZ系各種の材料の腐食挙動を調査した。具体的には、AZ31マグネシウム合金において、(3)ステント形状材の腐食浸漬試験結果では、未拡張材に比べ拡張材の質量損失量が大きくなり、耐食性に劣ることがわかった。腐食浸食試験により破断したステントのSEM像から、拡張材のステント支柱端部に腐食の進行が偏っていることが確認された。構造解析による拡張シミュレーション(解析)結果での引張残留応力の集中箇所もステント支柱端分であり、残留応力の影響により応力腐食割れに近い状態となり耐食性が低下したと推察された。ECAP加工材においても加工回数が8パスと強加工な条件であったことから複雑な応力状態であることが想定され、ステント形状材と同等とは言えないが残留応力の影響を受けたと考えられる。また、純マグネシウムおよびZM21マグネシウム合金においても、浸漬試験を実施し、腐食挙動について調査した。 【②流れの影響1】 ZM21マグネシウム合金管の内部の流体による腐食挙動に与える内部因子および外部因子の影響、ステント形状での腐食の影響をCFD解析ならびに、ステント拡張実験等によって調査した。ステント形状は2種類製作した。腐食液は0。9パーセント生理食塩水を適用した。流体腐食実験の結果から、ステント形状によって腐食速度の違いを確認することができた。また、腐食実験による材料が激しく腐食した箇所はCFD解析による壁面せん断応力が高い個所と一致し、その影響が大きいと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【①合金成分の影響】や【②流れの影響1】については、おおむね順調に進められている。 【①合金成分の影響】については、アルミニウム含有量の低さからマグネシウムの生体適合性評価に関する研究にも用いられているAZ31Bマグネシウム合金を対象に、ECAP加工による結晶粒微細化を施した。ECAP加工が引張特性および腐食挙動に及ぼす影響について、実際のステント形状での腐食挙動およびシミュレーション(解析)による構造解析と比較検討した。 AZ31Bマグネシウム合金の場合、室温引張試験の結果、Anneal材に対してECAP材、 ECAP+Aging材では耐力は低下するが、引張強さと伸びの両方が増加した。伸びの増加が著しくECAP加工後に時効熱処理をすることでさらに向上することもわかった。(2)ECAP加工材での腐食浸漬試験結果からAnneal材が最も質量損失量が少なく耐食性が高いのに対してECAP材、ECAP+Aging材は耐食性が低くなった。引張特性の伸びと同様に時効処理は耐食性の向上にも有効であることがわかった。これらの結果を踏まえ、マグネシム合金の圧縮変形特性の調査や、結晶粒の大きさの影響を純マグネシウムや医療に適用が期待されるZM21マグネシウム合金も含め、今後、確認する必要がある。 【②流れの影響1】については、ZM21マグネシウム合金の腐食に与える影響因子、具体的には、ステントの形状のおけるモデルの違いによって、腐食速度が異なるか確認した。具体的には、壁面せん断応力を集中させないようなモデルにおいて、急激な腐食欠損の抑制の可能性を見いだせた。また、流体の粘性による影響も明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
【③複合的な外的因子1】結晶粒の大きさによる影響を確認しており、今後は①ECAP加工(材料にせん断変形を付与)する方法で材料を改質したもの、材料にねじり変形を加え、先と同様にせん断変形を付与し結晶粒を微細化したもの、それを熱処理し転位を除去したもの等の腐食挙動を明らかにする。材料の改質評価として、SEMによる結晶粒の測定、TEMによる観察を実施し転位の有無を調査し、その上で、腐食量の違いを、生理食塩水を適用して評価する。マグネシウム合金は、引張りと圧縮でその特性が異なるため、引張りと圧縮に対する腐食挙動をそれぞれ評価する。また、本材料を体内で使用する場合においては、血管の収縮などの影響を考慮し、疲労特性を明らかにしたうえで、上記のいくつかの条件で改質した材料の疲労試験を行い、繰り返し荷重を受けた材料の腐食試験を実施し、その特性を評価する。 【④流れの影響2】ステント形状の場合、流体との関係性を確認するために、対象材料の管材 を用いて、拍動の影響について、詳細(拍動の大小とパターンの相違)に調査する。これまでグリセリンを使用して腐食実験を行い、腐食に粘性が影響を及ぼすことを明らかにした。すなわち壁面せん断応力が影響することが明らかになり、壁面せん断応力をステント形状によってどの程度まで回避できるか、解析を適用して検討する。また、これまでの研究成果から拍動の場合、腐食量が一様流に比べて多くなる。CFD解析を援用することにより、詳細な流れの状況を把握し、実験との相違から、何が腐食に影響を及ぼすか、明らかにする。 【論文公表・学会発表】【③複合的な外的因子1】に記した各種材料、結晶粒や転位の有無等についての腐食挙動を軽金属学会誌に論文投稿や疲労に関する論文をIMC2020 国際会議で公表したのちmetals「IF2.259」に投稿する。軽金属学会や塑性加工学会で口頭発表を同時に行う。
|
Causes of Carryover |
共同研究者、山田隆一助教が、「ESAFORM2020」国際会議に出席を予定しており、学会参加費として70000円を使用する予定であったが、新型コロナウィルスの影響で、学会が取りやめとなり、使用されなかったため、使用額に差が生じた。 翌年度は、上記学会で発表を予定した内容を別の学会「ICM2020」に参加予定のため、学会参加費にこの差額を充てるとともに、査読付き論文の掲載料の予定とする。
|