2020 Fiscal Year Research-status Report
軟骨細胞/アルギン酸ファイバーによる3次元編み構造培養軟骨の創製技術の開発
Project/Area Number |
19K04097
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 軟骨再生 / アルギン酸 / 細胞ファイバー / 編み構造体 |
Outline of Annual Research Achievements |
開発したアルギン酸ナトリウム(SA)ファイバー紡糸装置を用いて,異なる網目構造を有するブタ軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体を準備した.有効なファイバー間距離を探索するため,細胞封入SAファイバー巻取り時のトラバース速度を20,40 mm/sとした.比較対照として,同じアルギン酸量となる軟骨細胞/アルギン酸シートを作製した.トラバース速度20,40 mm/sでの平均ファイバー径は112.1μm,120.4 μm,平均ファイバー間距離は129.4 μm,241.9 μmであった.トラバース速度の増加に伴いファイバー間距離が増加した.培養7から14日までの編み構造体の細胞生存率の減少はシートより少なくなり,細胞活性の維持が確認された.編み構造体内のコラーゲンおよびプロテオグリカンは,シートと比較して広範囲に産生されていたが,トラバース速度20と40 mm/sにおいて分布の違いは確認されなかった.トラバース速度20,40 mm/sおよびシートのGAG/DNAは,87.4,142.5および77.5μg/μgであり,トラバース速度40 mm/sでの細胞外基質(ECM)産生量が最も高かった.編み構造体の値が最も高くなったことから,シートと比べ栄養供給が維持されたことが考えられる.また,トラバース速度20 mm/sに比べ40 mm/sにおいてECM産生が高くなったのは,ファイバー間距離が大きく培養液の浸透性が高かったためであると考えられる.SAを除去した場合,トラバース速度40 mm/sでは編み構造体の形態維持が確認されたが,20 mm/sとシートでは部分的なECM結合は見られたものの,編み構造体の全体の形態維持は確認されなかった.以上より,トラバース速度40 mm/sにおいて,良好な栄養供給によるECM産生の維持と,培養軟骨の構造体としての形態維持が可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画は,軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体の作製において,軟骨細胞活性維持や3次元構造維持に適したファイバー間距離や繊維径などの編み構造体作製条件の最適化を試みることであった. ファイバー巻取り時のトラバース速度を変えることで,ファイバー間距離が異なる軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体を準備した.また,編み構造とすることによる細胞活性維持の効果を検討するために,同量のアルギン酸量となる軟骨細胞/アルギン酸シートを準備した.網目構造とすることで,シートと比べ細胞活性低下と細胞死が抑制され,細胞外基質の産生量が高くなることを確認した.またファイバー間距離が変化することで,細胞活性が異なることを確認した.さらにトラバース速度を40mm/sとした場合,産生された細胞外基質が培養14日目には結合し,アルギン酸をEDTAで除去しても産生された基質のみで構造体の形態が維持されることを確認した. 以上より,概ね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに確立した手法で作製した3次元編み構造体の長期培養を行い,編み構造体作製条件の最適化を引き続き行う.編み構造体に求められる力学特性の獲得には,長期の細胞活性維持によるECM産生の向上と自己産生基質による組織形成の促進が必要である.多光子励起顕微鏡によるコラーゲン構造の3次元解析と圧縮試験による力学特性評価により,編み構造化された培養軟骨のコラーゲン構造形成とその力学特性について検討する.これらより,編み構造体の力学特性の向上に適した細胞密度,ファイバー径およびファイバー間距離などの作製条件を検討する.また,組織形成に寄与するECM産生の促進のため,成長因子のアルギン酸への添加により細胞活性を向上させることを試みる.
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Causes of Carryover |
前年度に開発した軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体の作製装置の動作が良好であり,今年度に予定していた装置の改良が不要であった.また,編み構造体の作製条件の探索が順調に進んだため,当初予定していた装置の開発のための消耗品代や評価のための原材料費などが低く抑えられた.
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