2020 Fiscal Year Research-status Report
耐水素脆化特性に優れた高強度材料開発のための指導原理構築
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19K04099
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山辺 純一郎 福岡大学, 工学部, 教授 (20532336)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素脆化 / 高強度鋼 / 強度特性 / 水素拡散特性 / フラクトグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に実施した引張強さ1000MPaレベルのSUS630から製作した鋭い環状切欠き試験片(H1150)の疲労寿命試験において,高応力・低寿命領域の水素チャージ材の破面は擬へき開と粒界で構成されており,疲労き裂進展速度(FCG)の加速率は100倍程度であった.本年度は粒界破面率を試験周波数ごとに詳細に調査した結果,同じ応力振幅において試験周波数が低くなるほど粒界破面率が高くなった.破面が擬へき開と粒界で構成されていることから,水素によるFCG加速が試験周波数依存型(擬へき界)と時間依存型(粒界)の重畳によって生じると仮定し,FCG加速率をSuperpositionモデルとCompetitionモデルで予測した.試験周波数依存型と時間依存型が独立にFCGに作用する両方のモデルではFCG加速率を再現することができなかった.そこで,試験周波数依存型と時間依存型のFCGが相互作用を生じるInteractionモデルを新たに提案した結果,実験結果をよく再現できた.このモデルは破面が擬へき開と粒界で構成される高圧水素ガス中で試験された低合金鋼のFCG加速率の予測にも有用であった.本年度は,引張強さ1300MPaレベルのSUS630から製作した鋭い環状切欠き試験片(H900)の疲労寿命試験も実施した.H900のFCG速度率はH1150よりも高く,試験周波数を遅くするにしたがってFCG加速率が大きくなり,FCG加速が上限値を示す傾向は認められなかった.水素チャージ材の破面はへき開状破面であり,試験数周波数を変化させても粒界破面が認められることはなかった.これより,H900のFCG加速率の予測にはH1150とは別のモデルを用いる必要性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はH1150のFCG加速率を予測するInteractionモデルを提案するとともに,H900の疲労寿命試験を実施した.H900とH1150で異なる破面様相を呈しており解釈は難しいものの,研究としては当初予定していたことができている.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には,水素チャージしたH900の引張試験を実施するとともに,透過型電子顕微鏡による粒内・粒界に析出した元素の分散状態の詳細観察と水素昇温脱離分析(TDA)による水素存在状態の調査を行い.H900とH1150の水素脆化メカニズムを明らかにする.TDAには析出強化処理をしていない溶体化処理(ST)材も使用し,粒内・粒界に析出した元素の水素トラップ能力を明らかにし,粒界破壊やへき開破壊への関与について検討する.
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Causes of Carryover |
(理由)コロナの影響で予定していた国内・国際会議がオンラインになったため (使用計画)試験片加工を前倒しするなど,予算の使用順序を変えて対応している.研究計画に変更はなく,前年度の研究費を含め,当初の予定通りの研究を進めていく.
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Research Products
(2 results)