2020 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of fatigue fracture mechanism on dissimilar joint by FSW and improvement of reliability the joints
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19K04100
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
岡根 正樹 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (90262500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | FSW / 疲労強度特性 / 異種金属接合体 / 摩擦攪拌接合 / 鉄鋼材料 / アルミニウム合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,マルチマテリアル構造を視野に入れた,摩擦攪拌接合(FSW)による異種金属接合材の疲労強度特性を検討する研究の一環として,疲労破壊のメカニズムを明らかにし,より高強度で信頼性の高い異種金属接合体を創製するための最適接合条件の構築に寄与することを目指すものである。2020年度は昨年度に引き続き,主に,①A6063/S45C接合体おける疲労強度特性におよぼす応力比ならびに後熱処理の影響,②熱処理型(析出強化型)Al合金と非熱処理型Al合金の接合材の疲労強度特性の検討を中心に行った。 このうち,①については,前年度までの検討で明らかにした,未熱処理材おける応力比R=0.1とR=-1の基本的な疲労強度特性に加え,破壊機構の検討,ならびに,A6063のT6処理における時効工程に準拠した熱処理を施した後熱処理材の疲労強度特性の検討を行った。その結果,未熱処理材の場合は,R=-1,R=0.1いずれの場合も,疲労破壊はA6063内の軟化領域端部で発生することがわかった。一方,後熱処理材の場合には,A6063内の硬度が回復するものの,最軟化領域において,回復の程度が低い箇所があり,その領域で疲労破壊が発生していた。疲労強度は,未熱処理材の場合は, R=0.1の場合が,R=-1の場合に比べて約50%程度に低下するのに対して,後熱処理材の場合は低下率が低く,長寿命域では顕著な差がみられないことがわかった。 ②の検討では,昨年度の検討で明らかにした最適接合条件で作製した接合体を用い,疲労試験を実施した。その結果,疲労破壊はすべてA6063内で発生し,A5052は疲労破壊に直接関与しないこと。A6063バルク材の疲労強度と比べ,R=0.1の場合は大きく低下したが,R=-1の場合は,低下率が低いこと等が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,摩擦攪拌接合による異種金属接合材の疲労強度特性を検討する研究の一環として,疲労破壊のメカニズムを明らかにすることを目指している。今年度,本科研費の援助と,別に獲得した予算の援助とをあわせ,疲労試験中に接合部近傍の変形のようすを非接触でリアルタイムに観察し,定量的な評価が行えるシステム(デジタル画像相関法・DIC)の導入,ならびに,接合部近傍の局所的な構成関係(応力-ひずみ関係)の分布を計測し,接合領域内で機械的性質が連続的かつ変則的に変化しているようすを,構成関係の分布として明らかにするために必要な,超微小硬度計を導入することができた。これらのシステムは,年度末に導入が完了した関係で,今年度は,主に,試運転や調整を行うことが中心となっているが,2021年度以降,それらを活用した本格的な検討が進むものと期待される。したがって,上記のような理由から,研究に必要な機器の導入としては予定以上の進展をしているものの,新規導入機器の活用については,2021年度以降がメインになることから,あえて,当初の予定よりも,やや遅れていると判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでも述べたように,本研究は,摩擦攪拌接合による異種金属接合材の疲労強度特性を検討する研究の一環として,疲労破壊のメカニズムを明らかにすることを目指しており,この方針に大きな変更はない。2021年度以降は,これまでの検討結果に基づき,①A6063/S45C接合体における疲労負荷過程中の変形のようすのリアルタイム観察,②A6063/S45C接合体におけるA6063内の構成関係(応力-ひずみ関係)分布の計測,③A6063/A5052接合体の疲労強度特性におよぼす後熱処理の影響,④ADC12/S45C異種金属接合体の基本的な疲労強度特性の検討,を中心に行う予定である。 ①,②の検討は,今年度に導入されたデジタル画像相関法・DICならびに微小硬度計を活用した検討であり,これまでの疲労試験で得られた基本的な疲労強度特性と,巨視的な疲労破壊の観察結果を融合させて検討,疲労破壊の詳細なメカニズムを明らかにする試みである。 ③の検討は,今年度までに得られた基本的な疲労強度特性に対し,A6063のT6処理における時効工程に準拠した熱処理を施した場合の疲労強度特性を検討するものである。これまでの検討からA6063内の硬度は回復するものの,A5052は熱処理型のAl合金ではないため,時効工程による硬度の回復が期待できないことから,軟化領域が残存することが予想され,このことが疲労強度特性に与える影響についての検討が必要と考えられる。 ④については,新規の検討項目であるが,先行研究により,基礎的な接合条件は明らかになっており,また,ダイカスト用Al合金であるADC12内には,A6063と異なり軟化領域が形成されないこともわかっていることから,本接合体の疲労強度特性とA6063/S45C接合体の特性との比較検討を行うものである。
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Causes of Carryover |
【理由】 次年度使用額が生じた主な理由は,主に,種々の学術講演会がすべてオンラインでの開催となり,旅費の使用が生じなかったことによる。 【使用計画】 種々の学術講演会に参加するための旅費については,講演会が開催されるか否か,つまりCOVID-19の影響が収束するか否かに依存しており,現段階では予測できないが,2021年度の主な学術講演会は,既にオンラインでの開催が決定しているものが多く,旅費としての使用は, 限定的になるものと予想される。一方で,研究遂行にかかる種々の実験やデータ解析等の検討は問題なく実施できるものと考えており,それらに必要となる各種の備品,消耗品の購入等で,使用する予定である。
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Research Products
(3 results)