2020 Fiscal Year Research-status Report
表層の材料流動を積極活用する新バニシング加工法の開発と樹脂射出成形用金型への応用
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19K04104
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岡田 将人 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (60369973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大津 雅亮 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (20304032)
三浦 拓也 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (60781466)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バニシング加工 / 樹脂射出成形用金型 / しゅう動 / 仕上げ面性状 / アルミニウム合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度(令和2年度)は,2019年度の同研究課題の成果により,良好な加工結果が得られたバニシング加工用DLCコーテッド超硬工具を用いて,アルミニウム合金のバニシング加工を実施した場合の,加工現象ならびに仕上げ面性状について詳細に明らかにするとともに,バニシング加工を適用した樹脂射出成形用金型による成形実験を行うまでに至ることができた. 本研究でバニシング加工法の活用対象としている樹脂射出成形用金型は,一般的に鋼材からなる.一方で,近年,アルミニウム合金が種々のメリットが期待できることから,金型材種として注目されている.そこで本研究では,今後,広範な活用が期待されているアルミニウム合金(JIS A7075)を加工対象材として選定した.加えて,これまでのバニシング加工は,工具と加工対象面間に作用する加工力を一定に保つために,ばねを内蔵した特殊な工作物把持機構を用いていた.一方,本研究で開発するバニシング加工は,切削加工後に,そのまま人手を介さずに機上一貫加工できる技術としての活用を目指すことから,2020年度の実験は,全て位置制御により動作する一般的なマシニングセンタを用いて実施した. はじめに,単純な平坦面を対象とした場合の加工条件が加工現象,仕上げ面性状,表層の残留応力状態に及ぼす影響を明らかにした.この実験では,工具先端の工作物への押し込み量により,両者間に生じる加工力の傾向を3方向分力でそれぞれ明らかにした.加えて,工具の回転によるしゅう動方向と,工具の送り方向の関係により,同一条件下においても,加工点で生じる材料流動形態が大きく変化することを明らかにした.次に,実際の樹脂射出成形用金型の仕上げ工程にバニシング加工を適用して,その金型より得られた成形品を,従来法である切削加工のまま,ならびに切削加工後に研磨加工により仕上げた金型による成形品と比較評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,2020年度は表面改質層の分析的評価ならびに,マイクロスラリーを用いた表面改質層の直接的な評価を計画していた.2019年度に,2020年度に予定していた実験の予備試験を先行して実施できており,その結果により,表面改質層の評価は分析的に実施することで,十分に金型への適用性について評価できると判断をしていた.そこで,2020年度は,マイクロスラリーを用いた表面改質層の直接的評価は省略し,2021年度に実施予定であった実際の樹脂射出成形に,バニシング加工により仕上げた金型を適用する評価実験を,表面改質層の分析的評価と併せて実施することとした.加えて,アルミニウム合金を加工対象とした場合,加工条件により表面性状が顕著に変化する傾向が認められたことから,表面改質層のみならず,仕上げ面性状についても継続して評価対象として扱うこととした. 仕上げ面性状の評価には,表面粗さ,表面形状,光沢度,表面組成,表面組織を対象とした.また,表面改質層の評価には残留応力を対象とした.これらの評価は,2020年度内で,有効な加工条件と思われる範囲で完了でき,当初の計画通りに着実に研究を遂行できた. 樹脂射出成形金型へのバニシング加工の適用性評価については,一般的なマシニングセンタを加工機として用い,金型形状を創成するための切削加工から一貫機上仕上げでバニシング加工までを適用した金型を樹脂射出成形に適用した.また,比較対象として,切削加工ままの状態の金型ならびに切削加工後に手研磨により仕上げた金型より得られた成形品を,バニシング加工により得られた金型にて成形された成形品と比較評価することで,その有効性を明らかにした.これらの成果は2021年度で予定していた実施事項であり,当初の計画以上に進展させることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度について,当初は実際の射出成形用金型にバニシング加工を適用し,それを樹脂射出成形に供した場合の有効性を,従来の加工法による金型の場合と比較することを予定していた.加えて,並行して研究を進めているバニシング加工による表面テクスチャリング技術を,樹射出成型用金型の表面仕上げに適用し,その有効性も評価する予定としていた.しかしながら,前者の実験は先行して2020年度で完了し,その有効性を明らかにすることができた.また,後者のテクスチャリング技術も先行して,その加工特性を既に検討している.そこで2021年度は以下のことを中心に進めることで,本研究課題で当初目指していた以上の成果の創出を目指す. ・本研究の実用性をより高めることを目指して,アルミニウム合金だけでなく,現在,一般的に樹脂射出成形用金型材として用いられている鋼材に対しても,バニシング加工条件による仕上げ面性状について検討を加える. ・アルミニウム合金を対象とした実験を進める中で,バニシング加工の加工特性を,より詳細に明らかにするには,加工点(工具と対象面間の接触点)で生じている現象を,より原理的に解明する必要性を感じている.そこで,より接触状態を単純化させた状態で,材料の流動状態の解明を目指す. ・バニシング加工により仕上げられた金型の樹脂射出成形用金型への適用の優位性を,より詳細に明らかにするために,バニシング加工により仕上げられた金型面が,射出成形中の樹脂の流動状態に及ぼす影響を明らかにする.本実験で,表面テクスチャリングによる金型面の高品位化についての検証も併せて加える. これらに加えて,学術論文,国際会議,学術講演会等において得られた成果を積極的に公開することで,本研究課題の最終年度として研究成果の広範な社会還元に努める.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じている.これは主に新型コロナウィルス感染症の感染拡大により,対面での技術相談,国際会議,学術講演会への参加が不可能となったことに起因するものである.これらについて,本研究課題の進捗状況が予定よりも進展していることから,本研究課題の到達目標を高度化させて,より充実した研究成果の創出のために使用する.
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Research Products
(5 results)